ひでG

黒い雨のひでGのレビュー・感想・評価

黒い雨(1989年製作の映画)
4.1
観ていたけど、書けなかった映画を
もう一度観て、きちんと書きますシリーズ15

絶対!今、今、観るべき映画です!
素晴らしく、映画史に残る名画であると同時に、私たちにとって大切な教科書の映画です!
ぜひ、ぜひ観てほしい作品です。

冒頭すぐ、1945年8月6日午前8時15分。
あっという間に、人々の生活は全て奪われていく。
すぐに、田中好子、すーちゃんの可愛い服に、髪に、容赦なく落ちる「黒い雨」 
その後の彼女の運命を知っているから、
なんとも悲しい。

原爆の怖さは、原爆投下直後に超高熱によって、ボロボロになって彷徨い、死んでいく光景を思い浮かべるが、

その後何十年にも渡って、被爆した人のたちを苦しめ抜いて、命を奪っていく原爆後遺症(原爆症)死に至らしめるという面も忘れてはならない。

本作は、その恐怖を私たちに教えてくれる。
北村和夫と市原悦子夫婦に育てられた田中好子は、夫婦の姪っ子。亡き姉に代わり、田中好子演じる矢須子を嫁がせることを願っている。

しかし、矢須子が黒い雨に当たったということから縁談を何度も断られてしまう。
被爆者たちを襲うさらなる悲劇、
「言われなき「被曝差別」だ。

今村昌平監督は、矢須子たち家族を中心にその村の人々を淡々と描き出す。

エンジン音を聞くと、敵軍と思い込み、突撃する男

原爆病の発症を恐れ、重労働を避け、釣りをして過ごす村人

そんな生活から、1人、また1人と原爆症がやってくる。

叔母が亡くなり、やがて、矢須子を襲う。
いつ来るか、明日来るかもしれない、という
恐怖。

矢須子の髪の毛がたくさん抜けてしまうシーンの本当に恐ろしく、絶望の淵に堕とされ、言葉にならない。

発症する前、まだ健康な頃の矢須子のお風呂でのシャットが、この髪の毛抜け落ちのショットと対になっている。

意味のない描写はない。ここには、原爆犠牲者の生の苦悩がそこにある。

巨匠今村昌平の元に、当時の最高の役者が揃い、語り継ぐべき事実を最高の映画にして
届けてくれた。

2011年4月21日、55歳というはあまりにも早く逝ってしまったスーちゃん。

スーちゃんの思い出とと共に、もっと34年前の本作をもっともっと観てほしい、
毎年上映してほしい名作です。
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