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タワーリング・インフェルノのsymaxのレビュー・感想・評価

3.8
"…そして俺は火と戦い、死体を運び続ける…安全なビルの建て方を聞かれるまで…"

世界一の高さを誇る地上138階建の超高層ビル"グラスタワー"の竣工式が開かれたその日…

81階にある倉庫の配電盤から火花が…最上階には300名もの来賓を招いてのパーティが開かれる中、タワーの設計者ダグはある事実に気がつく…配線の仕様が違うのだ…

オハラハン率いる消防隊による懸命な消火活動にも関わらず、火は瞬く間にビルを飲み込んでいく…

"設計屋…このビルだけは燃えないと思ってたよ…"

いきなり今日お休み…さぁどうしよう…家にいても暑いしねぇ…という訳でやって来ました"午前十時の映画祭"

小学生の頃、ゴールデン洋画劇場で前後編と二週に渡る放送をそりゃあワクワクしながらTVに齧り付いて観てましたが、やっぱりスクリーンで観ると迫力が違いますね。

"ポセイドン・アドベンチャー"や"大地震"と所謂ディザスタームービーが続いた当時の真打と言っても良い傑作であります。

ワーナーと20世紀FOXというメジャースタジオがそれぞれ別の原作で同じような高層ビル火災の映画を製作しようとしたのですが、どうせなら一緒に作っちゃえって、史上初めてメジャー・スタジオの共同製作となった作品であることは有名ですね。

当時、主にワーナー製作作品に出演していたスティーブ・マックイーンと主に20世紀FOX製作作品に出演していたポール・ニューマンという二大スターの共演が実現した作品でもありますが、今作が初共演ではなく"傷だらけの栄光"が二人の初共演となるのですが、既に大スターで主役を張っていたポール・ニューマンとは違い、端役であったマックイーンは、今作では堂々の主役と言えるのでは?

今作のオープニング・クレジットには、同じ画面に二人の名前が並びますが、マックイーンが左側やや下、ニューマンが右側やや上という並び、左側が先に読まれるのでマックイーンの方が上のようでいて、ニューマンの方が位置が高いので上にも見えるという中々高度なテクニックを使って、配慮しているという素晴らしさ…

にしても、今作のマックイーンは、めちゃめちゃカッコ良いです。

消防隊のチーフとして冷静沈着、仲間想い、命を賭けた厳しい状況にも関わらずユーモアを垣間見せる余裕があるようにも見えます…

助ける事が出来なかった命、失った仲間への想いをグッと抑えた演技で魅せ、"設計屋"に対して淡々とアドバイスし、颯爽と立ち去る姿のなんとカッコ良いことか…

一方で"設計屋"演じるポール・ニューマンもまたカッコ良い…最初から出ずっぱりで危機また危機を切り抜け、手抜き工事に激怒し、"コストを削るなら階層を削れ"という名台詞も飛び出します。

この二人以外にも名優が数多く出演していますが、ピカイチなのはフレッド・アステア…人の良すぎる詐欺師役を憂いたっぷりに演じ、今作での演技でアカデミー助演男優賞を取っています。

高層ビル火災でエレベーターに乗っちゃいけないとか、安易にドアを開けちゃいけない等火災の際のバックドラフトの脅威を最初に教えてくれたのが本作だったような気がします。

火曜日の朝イチなのに、結構お客さん入っていて、もう50年近く前の作品でありながら、今観ても全く色褪せる事なく、何度観ても飽きのこない名作中の名作であることを改めて感じたのでした…
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