りっく

トッポ・ジージョのボタン戦争のりっくのレビュー・感想・評価

4.4
「ミッキーマウス」に影響を受けて映像クリエイターになった市川崑が同じくネズミを主人公にしたドタバタ調のコメディタッチの作品。声も含めネズミが慌てふためく姿や仕草がキュート。

また「雪之丞変化」をはじめとする市川崑作品に多用される暗闇の背景で登場人物がぽつんと浮かび上がる演出は本作でも孤独感や寂寥感を生み出して実に効果的。

ミクロとマクロの視点から、一方では謎の組織による金庫破りのガンアクションとカーアクションが堪能でき、もう一方では事件に巻き込まれた孤独なネズミと赤い風船の孤独な魂の共鳴ドラマが展開される。

特にラストの自分の存在意義が無視され、唯一の友だちだった黒ずんだ赤い風船が警察によって割られ、その割れた風船の汚れを泣きながら水で流してあげるショットには涙腺決壊。「やっぱり赤いよ」とつぶやく名台詞は心に残り続ける。

人間の描き方も実にオシャレ。懐中電灯を当てられた際には書割になり、五人そろった時には顔は映さず、あえて誤植の靴下を映し出す。そのセンスに惚れ惚れ。
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