ボブおじさん

八月の鯨のボブおじさんのレビュー・感想・評価

八月の鯨(1987年製作の映画)
4.0
アメリカの北東メイン州にある小さな島。年老いた姉のリビーと妹のセーラは毎年夏の間にセーラの別荘で過ごす。入江には毎年8月になると鯨がやって来る。2人は幼なじみのティシャと一緒に鯨を見に行っていたが、それはもうすでに遠い昔の思い出になっている。

姉を演じるのはベティ・デイビスで、妹がリリアン・ギッシュ。この2人を知ってるか知らないかで、この映画の見え方は大きく変わると思う。

実は妹役のリリアン・ギッシュの方が年上で、この人はかのグリフィスの「イントレランス」でゆりかごを揺らす母を演じていた人だ。姉役のベティ・デイビスはオスカーを2度受賞している他、世界的な映画祭で何度も主演女優賞を獲っている〝フィルムのファースト・レディ〟。

つまりかつて輝かしい日々があったであろことを観客に想起させる意味でも、このレジェンド女優2人が起用された意味は大きい。

明るく前向きな妹と目が不自由なせいもありヒステリックで人間嫌いな姉。対照的な性格の老姉妹が肩を寄せ合いながら、ひと夏を過ごしていく様子が淡々と描かれていく。  

大きな事件が起きるわけでもなく、画面に映るのは美しい風景と老人ばかり。
人生の最期をどう迎えるか?
歳をとったら新しいものは必要ないのか?
8月の鯨はまた現れるのか?

アメリカ映画だが、まるでヨーロッパの映画のような雰囲気で、若い時に見た以上に、胸に染み渡る映画だった。