ぴろぴろ

八月の鯨のぴろぴろのレビュー・感想・評価

八月の鯨(1987年製作の映画)
3.7
公開時 話題になって、淀川長治さんも絶賛されてたけど、先に観た友人が「つまらなかった」と言うので観ずにいた映画。
老姉妹の日常を描く会話劇。 心揺さぶる感動も、想像を絶する結末も無い、淡々とした映画なのに、何だかこの姉妹の存在感が大きくて、ハリウッド往年の名優たちの共演に酔いしれる。 ささやかな日常と微妙な心理描写を描いた秀作。 キム・カーンズ「ベティ・デイビスの瞳」という歌が有りましたね。 この人ね…と思いながら観た。
若い頃の姉妹と、それから60年の歳月を経た現在の姉妹。 その間の出来事は、写真と会話で思い計るのだけど、2人の佇まいと彼女たちの顔に刻まれた深い皺が60年という歳月を雄弁に物語っている。 紆余曲折あって最愛の人との別れもあって、今 共に老いて、共に暮らしているという現実。 そしてそれは、これからも何があっても 離れることなく 最後まで寄り添うのだろう。 受け流せる度量の大きさは、この姉妹が共に生きて来た時間の重みと、言葉に出さなくとも通じる阿吽の呼吸があるからこそ。 2人の間を流れる空気がピリッとする時があっても、「良いとこあるじゃん」な瞬間もあったりして。
老いて体が不自由になったり、頑固になったりワガママになったりしても、幼馴染みも含めて、言いたい事を言い合える相手がいて、仲直りして、人生は続いて行く。

公開時に観たら、私も退屈だったと思う。
今観たから良かったのだろう。 あの友人も今観たらつまらなくはないと思う。
どうしてるかな。
この女優さん達と同じ年代で観たら、また感じるモノがあると思う。
この日観た2本は、こんな風に年を重ねるのも悪くないなと思わせる秀作揃いだった。
ぴろぴろ

ぴろぴろ