空海花

わらの犬の空海花のレビュー・感想・評価

わらの犬(1971年製作の映画)
4.0
サム・ペキンパー監督のバイオレンス劇傑作。
スティーヴ・マックィーンと組む前のペキンパー作品(この情報いらない?笑)

原題「Straw Dogs」で「わらの犬」
『老子道徳経』の一節
天地不仁、以万物為芻狗(天地は不仁、万物を以って芻狗と為す)から。
芻狗(すうく)は神に供える藁細工の犬のこと。
原作はゴードン・M・ウィリアムズの『The Siege of Trencher's Farm(トレンチャー農場の包囲)』

ダスティ・ホフマン主演。
彼の狂気じみた演技のミスマッチ感が
作品を奥深いものに変える。
初見時のイメージは『卒業』の人。
まさかこんなになるとは思えない。
その後『パピヨン』で、マックィーンと共演するホフマンのそこまでふっきれない飄々とした演技を思い浮かべる
(この情報いらない?part2笑)
今となっては出演作は色々あるので
イメージもそこまでは、かな。

初見ではその狂気にただ溺れるだけ。
再見すると、ペキンパー独特の美学に
魅せられているのがわかる。
アメリカから妻の故郷イギリスの
片田舎に越してきた数学者。
平和主義でその実、ただの臆病ではないかと妻に罵られるほど。
妻役スーザン・ジョージの体を張った演技も凄い。
ノーブラや挙げ句窓枠からのトップレス姿。
白のニットという素材感までのこだわり(エロい…)
抵抗しきれないレイプシーン。
女性としては実はあんまり見たくない😟
だが、殺されると思ったら…そういう心理も挟まれているのがきめ細かい。
物騒なアメリカの都市部から
移住してきたら、今度は村社会の
排他的な嫌がらせだ。
作られた時代を考えるとアメリカは公民権運動が過激になっていた時で
左派はもちろん、保守派の反動も大きくなっていた頃。
そんな背景も興味深いかも。

非暴力の男に秘められた暴力性が爆発したら、ただもう見ているしかない。
起爆するまでの心理描写にも注目してほしい。
この辺りの映像は狂気だが、
ペキンパー流スタイリッシュさも。
そうでもない(あと数学者的じゃない)
ところもあるが、それもまた一興。

最後の会話もシビれるわ。
歪なツーショット🚘
幕切れも最高。
しつこさとあっさりさが絶妙に同居している。


以下ネタバレです🙇‍♀↓


内に秘められた暴力性。
このトリガーは一つではないと思う。
精神薄弱者への執拗な責め
家に放たれる鼠
保安官の殺害
それぞれ示唆するものがあって
巧いな、と思う。
ネコでもなく妻が襲われたでもない。
あれだけ夫に対して、罵るようにけしかけていたのに、怯えまくって戸を開けようとする妻が皮肉。
(いや怯えるのは仕方ないし、
一緒に居たくないに決まっているし)
でも殺らなければ殺られる。
妻の銃撃がこれまた…凄いわ。
でも妻を守ろうとはしていたんだよね。


2021レビュー#067
2021鑑賞No.85


フォロワーさんのおかげで再見叶いました!
ysさん、ありがとうございます🙇‍♀
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