YYamada

ダ・ヴィンチ・コードのYYamadaのレビュー・感想・評価

ダ・ヴィンチ・コード(2006年製作の映画)
3.7
【サスペンス映画のススメ】
〈ジャンル定義への当てはめ〉
 ○: 観客の緊張感を煽る
 ○: 超常現象なし

◆作品名:
ダ・ヴィンチ・コード (2006)
 ~象徴学教授ロバート・ラングドン①
◆サスペンスの要素:
・「聖杯」を巡る、
 キリスト教最大の謎の探求

〈本作の粗筋〉
・ルーブル美術館館長ソニエールが他殺体で発見。ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」を模した死に様がダイイング・メッセージであることが判明する。
・パリを訪れていたハーバード大教授ロバート・ラングドンは容疑者としてルーブル美術館に呼び出されるが、暗号解読官のソフィーの手引きによりその場を逃れる。事件の真相を追うラングドンとソフィーは、聖杯研究の権威リー・ティービングの助けを借り、キリストに纏わる人類史上最大の謎に迫っていく…。

〈見処〉
①ダ・ヴィンチは、その微笑に
 何を仕組んだのか??
・『ダ・ヴィンチ・コード』は、2006年に製作されたミステリー・サスペンス。アメリカの人気作家、ダン・ブラウンの世界的ベストセラー同名小説を『ビューティフル・マインド』のオスカー監督、ロン・ハワードが忠実に映画化。
・出演は、主人公であるロバート・ラングドン教授役にトム・ハンクス。ポール・ベタニー、ジャン・レノ、オドレイ・トトゥ、イアン・マッケラン、アルフレッド・モリーナ、ジャン・レノらが脇を固めている。
・フランスの首都パリを中心に、文化的、歴史的な建造物が多数登場。ルーヴル美術館で映画の撮影が許可されたのは本作が初である。
・キリスト教の陰謀と闇を描いた本作は、まさに「知のインディ・ジョーンズ」。原作同様に世界的に大ヒットを記録した。

②批判と論争
・本作の原作小説の冒頭には「事実」として、「シオン修道会」は、1099年に結成された実在する秘密結社であり、ニュートン、ヴィクトル・ユゴー、ダ・ヴィンチらがメンバーに属していたこと。同作に登場する芸術作品、建築物、文書、秘密儀式に関する記述は事実にもとづいていることと記載している。
・しかしながら「シオン修道会」は20世紀に創作され、ダ・ヴィンチが同組織に属していた史実はないこと、「最後の晩餐に聖杯が描かれていない」 も、実際の絵画にはグラスが描かれているなど、原作小説は、実在した人物や組織に対して、枚挙にいとまがないほどの虚飾エピソードやフィクションをスリリングに組み合わせだけの娯楽作品と評価された。
・そのいわく付きのトンデモ原作を忠実に映画化したのが本作。「虚実」を「事実」のように洗脳される宗教的な理由から、複数の国にて、上映禁止措置や上映反対運動が行なわれ、米国カトリック司教会議は、反論サイトを開設。また、インド、中国、エジプトど、非キリスト教諸国でも上映禁止となった。
・ハワード監督作品の中で最も高い興行収入を記録するなど、興業面では大成功をもたらした本作であるが、「フィクションを事実のように洗脳する危険性」や「個々の推理シーンの説明描写が稚拙」として、ゴールデンラズベリー賞の最悪監督賞にノミネートされるなど、批評家から由々しき否定的な評価を受けている。

③結び…本作の見処は?
◎:作中にラングドン教授が語るように「ありえなくはない」聖杯伝説の真相を巡るエピソードを、過去の歴史的事件の映像と重ねて描かれており、知的探求心を擽る一大エンターテイメントとなっている。とくに、「最後の晩餐」でイエスとマグダラのマリアとされる人物の立ち位置を入れ替える考察は、事実誤認を招かざるを得ないほどの説得力がある。
○: 聖杯研究の権威リー・ティービングを演じるイアン・マッケラン。ガンダルフとマグニートの中間にあるような印象的なそのキャラクターにより、本作の価値を高めている。
▲: キリスト教の陰謀を明るみになるタイミングに沿って事件が展開する「ご都合主義ストーリー」は否めない。
▲: 誤った知識を植え付けられないように、大学受験が終わるまで鑑賞を控えたほうがよいかも。
YYamada

YYamada