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SPIRIT スピリットの0000のレビュー・感想・評価

SPIRIT スピリット(2006年製作の映画)
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一方で『マトリックス』『グリーン・デスティニー』『HERO』の流れのワイヤーとVFXによる幻想的な映像、もう一方で『ボーン・アイデンティティ』または『マッハ』の流れの重い打撃とザクザクのカット割り、という二方向の潮流が一人歩きしていくことで、その基本にそもそもあるカンフー映画というものへの世間の熱が冷めつつあったころに、『SPIRIT』という邦題や中村獅童との対決などという安っぽい要素での売り方をされていた映画……、というような印象だったけど、ジェット・リーファンの評価が高いことを今更知って観た(140分超えの完全版のほう観たけど短い版もそのうち観ようと思う)(追記:短い版も観た。増えてる場面でそこまで重要なものもないし、かといってそれらがつまらなくて不必要ってほどでもないし、特にどっちのほうがいいというほどのこともないが、強いていうと演武シーンを長めに見せる完全版のほうがよかった)。

なるほど『少林寺』でデビューして『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』でブレイクし「功夫皇帝」と呼ばれた彼の集大成と呼べる出来だった……。
ワンチャイ系(弁髪のジェット・リーが伝説の英雄を演じる一連の作品)にして精武門系(もはや古典と化した『ドラゴン怒りの鉄拳』の伝説的ヒットに続く一連の関連作)という本命の一本的題材。
当時ジェット・リーはこれが最後の武術映画出演だと宣言したらしいけど、ある種『許されざる者』『グラン・トリノ』的なお話。
前半の調子に乗ってるころの主人公と、後半の落ち着いた演技との演じ分けもうまい。
VFXもスパイス程度にうまく使いながらちゃんとジェット・リーの本格カンフー映画だった。
『少林寺』を思い出させる演武シーンで泣けた。
あと三節棍がうますぎる。華麗すぎる。

中村獅童はアクションは吹き替えばっかでほぼ顔の出演と言える。

最後の公開連続他流試合で、一人目はボクシングだけど二人目三人目が槍と剣で、防具なしで真剣の試合をしていて、圧倒的にジェット・リーが強いから双方怪我もないまま相手の攻撃を封じたところで「勝負あり」って感じで終わらせてて、クライマックスをそんな安いリアリティで行くんかー、と思ったら四人目の獅童戦の前半日本刀対三節棍が、お互い寸止め引き分けで決着がついたので、もしかして今までの試合も全部恐ろしく両者とも高度な寸止め試合だったの?? ってなったけど、そこはよくわからん。

最後、盛られた毒がジェット・リーに回ってなかったらこのトルネードパンチみたいなのの威力は相当な殺人パンチだったのだということを、弱いパンチを食らった獅童はわかり、ジェット・リーも獅童の目を見てニヤリと笑いながら毒で倒れる、獅童負けを認める、みたいなスーパー達人同士のやりとりを台詞なしで見せるのはすごい。『あしたのジョー』みたいな漫画的世界だけど漫画だったら絶対にナレーションか心の声か外野の解説台詞が入るところ。
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