りょう

APPLESEED アップルシードのりょうのレビュー・感想・評価

APPLESEED アップルシード(2004年製作の映画)
4.0
 当時はCGアニメもモーションキャプチャーも馴染みがなかったので、かなり斬新な映像に魅了されました。約20年も経過した現在の技術からすると、少し劣化している印象はありますが、あまりこの分野にこだわりがないので、まだまだ迫力ある作品として観られました。主人公のデュナンが少しおっとりした性格の女性で、なのに最強の戦士というギャップが悪くないです。
 新人類のバイオロイドは感情が抑制されているので、怒りや憎しみがなく、したがって紛争も根絶できる…という理想が主軸になった物語でした。旧来の人間は戦争ばかりしているので、両者が共存するのか、どちらかを絶滅させるのかという、複雑そうで意外と単純なストーリー展開です。
 戦争をはじめるのは、いつも“人類”という大雑把な主語になりがちですが、実際には一部の政治家などが自己中心的な利害関係を重視して意図的に発生させる構図があります。為政者がさまざまな感情を駆使し、国際社会を融和と協調に導けば、紛争は未然に防止できるはずでが、あえてそれをしない人間が一部には存在します。人間の感情を抑制すれば、戦闘や殺戮への恐怖もなくなったりするので、逆に戦争のリスクが高まりそうです。必ずしも怒りや憎しみという感情が悪いことだけに作用するわけでもないし、さまざまな感情に基づく想像的な発想も妨げられてしまうので、社会の発展も期待できません。
 アニメの作品は、どうしても映像を重視してしまうので、物語はあらすじを追いかけて終わってしまいがちですが、こんな哲学っぽいことも想像する機会にもなったりして…。いまとなってはあまり評判がよくありませんが、個人的にはまだまだ好きな作品です。
りょう

りょう