さく

赤ひげのさくのレビュー・感想・評価

赤ひげ(1965年製作の映画)
4.5
午前十時の映画祭にて鑑賞。本作はかつて学生の頃レンタル(VHS)してきたはいいものの「長い」のと「最初の頃重い」のとで途中で挫折したまま今に至っております。しかし、面白かった!

冒頭から2/3くらいまでは、結構重くて緊張感のあるシーンが続いて、「まあこれはこれで社会はドラマとして名作だと思うけれど、3時間ずっとこれはちょっとしんどなぁ...」なんて思いながら見てました。

基本的には死に際に真実が語られる『鬼滅の刃』方式(勝手に名付けた)をベースに物語が進みます。新出去定(赤ひげ)を演じる三船敏郎は若い頃のギラギラした感じとは違い、貫禄のある存在感を魅せてくれますが、佐八(山崎努)や”狂女”(香川京子)といった脇を固める役者陣が素晴らしかったです。特に、保本登(加山雄三)と”狂女”の遭遇シーンは凄まじい緊張感で鳥肌ものです。

文字通り「休憩」を挟んだあとは、『鬼滅の刃』方式から一転して、辛さの中にも希望や笑いを織り交ぜながら進行。もはや別の映画! かとも思いましたが、きちんと物語は収斂されていく。Wikipediaによると、「前半は山本周五郎の『赤ひげ診療譚』、後半はドストエフスキーの「虐げられた人びと」をベースにしている」そうです。また、山本周五郎は「原作より良い」と評されたそうです。

後半は、現代で言えば是枝裕和監督のように、子役をデフォルメされた「子供扱い」せずに物語の軸を演じさせ前半の枯れた感じと違い心地よい瑞々しさを感じさせる。保本とおとよ(二木てるみ)にお互いを看病させることでお互いが成長して行く様は微笑ましくもあり、こちらもいい気分になってくる。

それにしても、志村喬と笠智衆の贅沢な使い方よ...
とにもかくにも名作。
さく

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