千年女優

赤ひげの千年女優のレビュー・感想・評価

赤ひげ(1965年製作の映画)
4.0
幕府お抱えの御番医を目指すエリート志向の見習い医師で、長崎での修行を経て「赤ひげ」と呼ばれる新出去定が所長を務める江戸の小石川養生所を紹介されて入所した保本登。理想とかけ離れた様に破談となった許嫁の陰謀を疑って反発する彼が、貧しい人に真摯に対応する赤ひげと病人たちとの交流から心を入れ替える様を描く時代劇です。

戦後の日本映画界を支えて国際的な評価も確立した黒澤明が、山本周五郎が上梓した短編小説集『赤ひげ診療譚』を原作にドストエフスキーの『虐げられた人びと』のエッセンスを加えながら作り上げた、彼のキャリアで最後の白黒映画にして最後の三船敏郎出演作で、日本国内はもちろん国際的にも賛辞を集めて多くの映画賞を獲得しました。

現実を知らぬ生意気な青年が不愛想なメンターの背中を追って改心する様を骨格に、医療を通して「健全な精神は健全な肉体にこそ宿る」と三時間の長尺でこんこんと説きます。唐突にも見えるチャンバラも暴力が一時的解決をもたらしたとしても行き過ぎてしまうことを示して、労りや慈しみこそが他人ひいては自分をも救うと綴る一作です。
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