湯っ子

テイク・ディス・ワルツの湯っ子のネタバレレビュー・内容・結末

テイク・ディス・ワルツ(2011年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

どこかむなしい表情で焼き菓子を作るマーゴ。
その傍らにいるのは、あなただったのね。

主人公のマーゴを演じるミシェル・ウィリアムズは、すごい美人じゃないけど、少女っぽさの残るかわいらしい女優さん。
カラフルでポップな色遣いのファッションもすごく好き。カメオの指輪や、青いペディキュアもかわいいな。
インテリアや画面もカラフルなのに、どこか寂しげで不安な感じがよく出ている。オレンジと、補色の青がすごく際立つ映像だから、マジックアワーの海がすごく綺麗だった。

心の隙間って、ほんとは誰にでもあるのに、マーゴはそれを自分でよけいにこじ開けて、彼をすべりこませてしまった。マーゴのことを嫌いだって言うひともいると思うし、私も実際にはこんな行動はとったことない。だけど、マーゴの気持ちのひとつひとつが、すごくよくわかった。

恋は恋のままで終わるのがいい。ダニエルが朝早く、家を出て行くとき、私はやっと、この不実な恋が終わるのだとほっとした。
だから、その後の展開や、ルーの悲しみがひりひりと痛かった。心のままに走って、そのまま結ばれたふたりだけど、それまでの、触れ合わないからこそ切なく美しくエロティックな交歓に比べて、なんと薄っぺらいことか。
ここの描写がすごくうまいと思うのは、映像的な美しさと、実際行われている行為の滑稽さを同時に成立させているから。こんなことのために、ちょっと鈍感だけど優しい夫を捨ててきたんかい!って思う。で、あら、なんか見たことある雰囲気に…ってところを数分間で見せる。

マーゴはあの後、どう暮らしていくんだろう。手の中にないものがまぶしく見えちゃうところ、変わってないように見えるよ。
湯っ子

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