ニシカワリキ

河上の別荘のニシカワリキのレビュー・感想・評価

河上の別荘(1930年製作の映画)
3.4
アンスティチュ・フランセ映画特集「スポーツと映画」にて。これが野球枠なのはどことなく不可解ではあるが、映画体験としては悪くはない。1930年の映画とあって、フィルム飛びだらけなのも味といえばそうだし、刑務所といえどどこか牧歌的な空気感が漂いノスタルジック。脚本術なるものが幅をきかせる現代から見るとどうしても恋愛モノとしてはチープな作りに映ってしまうが、時代的にはむしろその原型、娯楽の正道を作った側として評価されるべきだろう。
"Ball"そのものがBaseballを指し、それがnational pastimeとも呼ばれるアメリカ文化を思えば、まさにこんなふうに、呑気なpastimeのような映画であることこそが野球映画の真髄、という読みもできなくはないか。ゆえにやはり、現代野球の商業主義──ピッチクロックでプレーをせかして時間圧縮を図るくせに、コマーシャル用のイニング間のダラダラした時間にメスを入れない機構の姿勢──はball gameすなわちpastimeへの冒涜として断固批判しなければならない、と、一介の野球好きとしては思うわけである(映画と関係なさすぎて、すいません)。