うえびん

近松物語のうえびんのレビュー・感想・評価

近松物語(1954年製作の映画)
4.0
色褪せないもの
失われてしまったもの

1954年 溝口健二監督作品

今から70年前の作品
脚本は近松門左衛門の『大経師昔暦』
井原西鶴の『好色五人女』の一部
二つを合体させたもの

舞台は江戸時代(1700年代)の京都
今から300年以上も前
江戸の風情が感じ取れて興味深い

今も昔も
男と女
色恋沙汰がドラマを生む

舞台セット
カット割り
光と影

一つひとつのシーンが美しく
芸術性が感じられる

役者の立ち居振る舞いからは
失われてしまった何かが感じ取れる

『からだのメソッド』(矢田部英正)


古来、日本人は床や畳に直接腰をおろす「床座」の生活を営んできました。椅子とテーブルが普及するようになって、現代では床座の習慣も徐々に失われつつありますが、床座から椅子座へ生活スタイルが変化するなかで、私たち日本人の身体に大きな変化が生じました。

床に座ることは、足首や膝、股関節を深く曲げなければならないので、床座の生活をしていれば、おのずと股関節の柔軟性が養われます。椅子を用いることによって、足首や膝への負担は軽減されますが、それが習慣化してくると、床座に必要な関節の柔軟性が失われてきます。

現代では床にしゃがむことのできない子どもが増えていますが、このことも足首の柔軟性と大きくかかわっています。正座して足がしびれたり、胡坐をかいて腰が痛くなったり、床座にまつわる諸々の問題は、楽に座るための技術と方法が、時代の変化とともに忘れ去られてしまったからに他なりません。


歩くときの重心の低さ、すり足
身のこなし、立ち居振る舞いの柔らかさ…

現代人では再現が難しいであろう
自然に身に付いた身体技法が興味深い

ご先祖様、お家様、家の恥
人の道、面目、不幸者、無法者
うらめしや~、えらいこっちゃ~…

今でもわずかに残る日本的なもの
意味は知っているけれど
日常では使わない言葉たちが興味深い

名作には
時と共に失われてゆくものが
色褪せずに映し込まれている
うえびん

うえびん