ツクヨミ

近松物語のツクヨミのレビュー・感想・評価

近松物語(1954年製作の映画)
4.1
逃避行劇に愛で結ばれ散る男女.やはりどう見ても"勝手にしやがれ"に繋がる。
溝口健二監督作品。特集"大映4K映画祭"にて鑑賞、"雨月物語"がよかったので同じ溝口監督のこちらも見に行ってみた。
まず本作は江戸時代のとある商店を舞台にし、下働きの男と店主の妻との禁断な逃避行恋愛を描いた作品になっている。最初はオーソドックスな江戸人情劇だが、店主の妻が弟から金貸しを依頼されめちゃくちゃ絡まりまくる人間模様が展開され逃避行になるしかない脚本はなかなか。そこら辺は流石に原作の近松門左衛門のパワーであろうか。
なのでわりかし淡々と物語が展開されあまり感情移入できないタイプかと思ったが、逃避行の果てに自分が原因を作ってしまったという罪悪感を抱えた二人が愛で結ばれるというのがダイナミックな移動ショットで見せられるのがいかにも溝口健二な撮影で最高にエモーショナル。そこからはけっこうな引き込まれパワーで引っ張られていく展開に釘付けであった。
あとやはりプロットというか要素要素がゴダールの"勝手にしやがれ"にめちゃくちゃ影響与えてそうだなと感じた。最初らへんのラストの示唆的な罪人市中引き回しなんかモロだし、愛のために奔走し逃避行を続ける展開は少し違うがやはり実在の事件を元にしてそうだ。悲劇的な終わり方といい日本の悲劇物語はヌーヴェルヴァーグに多大な影響を与えていると思う。"雨月物語"といい溝口健二監督作品は後世に与えた影響で評価しがちになってしまうなー。まあそれを抜きにしても物語としてけっこう好きではあるけど。
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