サマセット7

トイ・ストーリーのサマセット7のレビュー・感想・評価

トイ・ストーリー(1995年製作の映画)
4.1
1995年公開のフルCGアニメーション映画。
監督は「バグズライフ」「トイストーリー2」のジョン・ラセター。
主演の声を演じたのは「フォレスト・ガンプ/一期一会」「プライベートライアン」のトム・ハンクス。

[あらすじ]
少年アンディのおもちゃたちは、カウボーイのおもちゃウッディ(トム・ハンクス)を筆頭に、新しくやってくるおもちゃの情報に一喜一憂。
そう、彼らおもちゃたちは、子供たちの見えないところではしゃべって動いているのだ!!
そんな中、アンディの誕生日に、新たなオモチャ、スペースレンジャーのバズ・ライトイヤー(ティム・アレン)がやって来た!!
お気に入りのオモチャの座をバズに奪われたウッディは嫉妬の炎を燃やす!!
一方のバズは、自分が本物のスペースレンジャーだと思い込んでおり…。

[情報]
ピクサー・アニメーション・スタジオによる最初の長編作品にして、史上初の長編劇場用フルCGアニメーション作品。

ピクサー・アニメーション・スタジオは、元はルーカスフィルムのうち、コンピューターアニメーションを担当する1部門であった。
同部門を、スティーブ・ジョブズが買収し、ピクサーという独立した会社とした。
その後、紆余曲折を経て、アニメーション映画の制作会社となり、ディズニーと共同制作、配給の契約を結んだピクサー・アニメーション・スタジオは、ジョブズの資金援助もあって3000万ドルの製作費を投じて今作を公開。
3億6000万ドルを超える特大ヒットを記録した。

さらに今作に多数登場する実在のおもちゃが、爆売れするという現象をも巻き起こした。

今作後もピクサーは良質なCGアニメーション映画のヒット作を輩出し続け、ついにはディズニーの完全子会社となる。
その際は、ピクサーのトップにして今作の監督であるジョン・ラセターが、ディズニーのクリエイティブ面のトップに立つという、実質的な乗っ取りをも成立させてしまった。

今作は、ピクサーの原点にして快進撃の始まりにしてCGアニメーションの始まり、という歴史的意義の大きな作品である。
さらに、今作は、作品としても極めて高く評価されている。
批評家は今作を絶賛しており、一般層からも幅広い支持を集めている。

ジャンルは、おもちゃたちの冒険を描いた、ファンタジー・アドベンチャー。
バディムービー、アクション、サスペンスの要素も含む。

ストーリーは、ひょんなことから、引っ越し直前の持ち主の少年アンディの家から弾き出されてしまったおもちゃのウッディとバズが、アンディが家を出るまでにアンディの元に帰ろうと奮闘する、というもの。
伝統的な行きて帰りし物語の系譜を継いでいる。

[見どころ]
一作目にしてすでに完成されている、おもちゃたちの多彩な表情!動き!演技!!演出!!!
3DCGが描く彼らの「生き生き」とした姿は、驚くべき没入感を生む!!
大人、子供両方の共感ポイントを配した、ピクサー印のハイクオリティ・シナリオ!!!
トイストーリーサーガの始まりとなる、深遠なるテーマ性!!!

[感想]
言うまでもなく最高の作品。
これが1995年の作品とは。
意外にも結構昔だ。

今作の魅力は、一般的に、アニメーション表現のクオリティと、物語や演出の巧みさが、両方とも極めて高いレベルにある点、だと思われる。

特に私が最も好きな点は、キャラクターの心情が、非常に情感豊かに描かれているところだ。
嫉妬に狂うウッディの、人間以上に人間らしいイヤラしさ!!
アイデンティティの喪失を経験するバズの失意!!!
おもちゃであり、CGアニメにすぎない彼らの感情が、いかに現実的に感じられることか!!

もちろん、「人間に見つかってはならない」という設定の生み出すスリルや、3DCGであることを活かし切った迫力あるアクションも最高であることは言うまでもない。

さらに!シナリオ!!!
「かっこよく落ちただけさ」が、こんなにも完璧に回収されるとは!!!

ラストワンカットに至るまで、子供も大人もニッコリの完成度だ。

[テーマ考]
ピクサーアニメあるあるだが、今作にも、子供向けアニメーション、と言うには、かなり深いテーマ性が仕込まれている。

今作のおもちゃたちは、アンディのお気に入りか否か、彼に新居に連れて行ってもらえるか否かで一喜一憂する。
その姿は、例えば、会社の評価やコーチの評価に一喜一憂する人間の姿そのものだ。

つまるところ、今作は、オモチャたちの奮闘を描くことで、人間が自らの存在価値を見出そうと四苦八苦する様を描いた作品である。
自分という存在の価値は何なのか。
何によってもたらされるのか。
価値が損なわれたと感じた時に、どのように折り合いをつけるのか。
これらの今作で暗に繰り返される問いは、社会的な存在でしかあり得ない、ヒトの普遍的な問いである。

他方、今作の敵役である嗜虐的な少年シドをめぐっては、「物を大事に扱うこと」といった啓発的なメッセージも仕込んでいる。
これはこれで、大量消費時代の批評として、立派なテーマであろう。

[まとめ]
世界初のCGアニメーション映画にして、ピクサークオリティの原点たる傑作。
今作を始めとするシリーズは4作に及び、いずれも批評家から高い評価を受けている。
改めて、順次観ていきたい。