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散弾銃(ショットガン)の男の3104のレビュー・感想・評価

3.5
日活のおなじみ「無国籍アクション」に類される1本。

散弾銃(ショットガン)を手に山から山を渡り歩く“流れ者”。流れついた山中の村で真珠のネックレスを見つける。それは彼の婚約者が身に着けていたもので・・。

殺された婚約者の仇をとらんと復讐に燃える主人公・渡良次にダンプガイ二谷英明。寡黙でクールな役柄だが、アキラやジョーと比べていまいち“色気”が足りないか。ほかライバル的役柄の「ジープの政」に小高雄二。バーの女・春江に南田洋子。いい感じに色気と悪女的な空気をまとっている。
悪役陣では佐野浅夫が目立ち過ぎないながらもいい塩梅で、あと村に居座る用心棒三人組(江幡高志/郷英治/どっきりカメラ野呂圭介)の“小悪党面”がいかにもな感じを醸し出している。
そしてヒロイン役は、二谷と同じく大事な人を何者かに殺され、犯人捜査のため「保安官」になった男・奥村の妹の節子を演じる芦川いづみ嬢。どこか取って付けたような役柄で二谷との絡みも出番自体も少ないが、清楚な雰囲気は相変わらず素敵だ。ジーンズに白ブラウスに紺のカーディガンと、現代でもそのまま通用しそうな~手堅いともいう~いでたちが、西部劇風のファッションの他の演者の中でどこか浮き、もとい安心感を与えてくれる。ラストの砂浜のシーンで何度か走らされる様が印象に残る。特にジープを追いかけるラストカットは全力疾走じゃなかろうか(懸命に走る姿もまた素敵)。

天竜川だか木曽川だけの流域でロケをしたそうだが、さすが無国籍を標榜しているだけあってここはどこだ?と思わせるような描写がそこかしこに。あんな山中の製材所近くにスイングドア付きの立派な酒場があるというファンタジー。そもそも(警察が陳情を受け入れてくれないとはいえ)「私設保安官」がいる時点で、拳銃やショットガンをオープンキャリーしている時点でそこはもう日本ではない。もちろんそういう荒唐無稽はおおらかに受け容れて楽しむに限るというもの。

監督は巨匠扱いされるはるか前の鈴木清順。
場面場面のつなぎが荒いというか雑というか、唐突できちんとつながっていない箇所がいくつか。それがあるたびに「?」となり、一瞬脳が混乱してしまう。しかし劇場の深い椅子に座り大きなスクリーン大きな音で観ていると、そういう「難」さえも映画という“体験”の一部として吸収・消化(≒昇華)されてしまう。果たしてこれは幸福なのか不幸なのか。僕は前者だと思っている。
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