茜

溶解人間の茜のレビュー・感想・評価

溶解人間(1977年製作の映画)
3.3
土星探査から帰還した宇宙飛行士の身体が、宇宙で浴びた謎の放射線(?)の影響でドロドロに溶けだしてしまう。
まさに絵に描いたようなグチャドロホラーであった。
妖怪人間ならぬ溶解人間とはよく考え付いたもので…。

大筋だけ見ると、只々理不尽に溶けていく主人公が可哀想な非情映画ではあるんだけど、実際観てみると中身とのギャップに驚きます。
太ったナースが全力疾走で逃げ回る様をスローモーションで映すカメラ、川をどんぶらこと流れてくるハゲの生首、クソほどつまらんジジババのいちゃいちゃコント等々…。
随所に挟み込まれるとぼけたシーンの数々に、この映画の温度感を見失ってしまう。
監督がどういう意図で下らないシーンを多々挟み込んできたのかは謎だけど、これらのお陰でストーリーの重さと高クオリティのSFXに反して紛れもないポンコツ映画に仕上がっておりました。

とは言え70年代とは思えぬSFXのクオリティは抜群、改めてリック・ベイカーって凄い人なんだな~と思う。
ヌメヌメぬちょぬちょドロドロした質感は、昔のザラついた質感の映像でも極めてリアル。
ラストに崩れ溶けていく様なんか出来が良すぎてもはや芸術やんけって思ったし、汚い絵面なんだけど妙に哀愁があって切なくなる。
だからこそ、もうちょっと真面目にストーリー組み立ててしっかり作りこんだ物も見てみたかった。
ポンコツ映画は個人的に大好きなんだけど、本作に於いてはSFXがガチで素晴らしいだけに、その点が残念要素に思えてしまう…。
茜