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ジェラシーのくりふのレビュー・感想・評価

ジェラシー(1979年製作の映画)
4.0
【スノッブ・メッキが剥がれるまで】

自殺未遂で昏睡状態に陥った女が、病院に担ぎ込まれるが、通報した男の証言が、どうも怪しい。犯罪の匂いを嗅ぎつけた刑事は、二人の過去を洗い始める…。

映像耽溺系ニコラス・ローグ監督の、ウイーンを舞台にした、トリッキーな、赤裸々愛のミステリー。1979年の作品ですね。

邦題にある嫉妬の思いからか、女をストーカーのように追う男の回想と、昏睡状態の中での女の回想、そして刑事の捜査。これらの断片が渾然一体となって進む展開は、キレよいところもダレるところもあり、もう一声、整理しては欲しかった。終盤で全てが生きては来ますけどね。生々しく説得力のあるエンディングでした。

原題どおりの、最悪のタイミング。

肉欲と愛情と、それを所有しようとする事などを、皮肉ってみたり、ふと考えさせてみたりする、謎かけ満載の映画でした。

ウイーンという舞台故か、クリムトとシーレの全裸系絵画がこれみよがしに登場し、主役カップルの濃厚な絡みの、注釈のように響きます。ちょっとスノッブ臭いな、とも思いましたが、その感覚も終盤で見事に、ひっくり返されますね。

まだ20代前半なはずなのに、すでに爛熟気味で、下品ギリのフェロモンを撒き散らす謎の女、テレサ・ラッセル。映画に馴染めないようで、演技もどうも怪しくて、しかし、声の良さで惹きつける大学教授、アート・ガーファンクル。感情を抑えて捜査に集中するが、腹にイチモツおありのご様子で、真相に近づくと! …となる刑事、ハーヴェイ・カイテル。この三者のアンサンブルが、なかなか効いておりました。

治療のために切り開かれ、性欲のために食いつかれる、テレサの肉が、生贄のようでもあり、しかしそれが、全てを惑わせているような、強烈な匂いと存在感がありました。

<2010.2.15記>
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