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イントゥ・ザ・サンのとりのレビュー・感想・評価

イントゥ・ザ・サン(2005年製作の映画)
4.3
上映最終日前日ギリギリで鑑賞。終わりかけのわりにお客さんは入ってました。根強いファンに支えられる映画って感じがして良いですねー。
そして映画は思ってたより出来が良かった。もっとグダグダのひどいのを期待してたんですが、意外とこじんまりまとまってたし、出演者も粒ぞろい。
典型的セガール映画の日本版って感じでした。親日家のセガールが日本のファンの為に作ってくれた映画なのでしょう。ありがとう、セガール。
期待通りセガールが一方的に強く、最後には結局大暴れして一件落着。これですよこれ。

ストーリーはほぼないに等しい、というか深く考えちゃいけない系です。大筋がなんとなーくあって、あとはあやしげな日本語を駆使する空気の読めないガイジンさん(セガール)が外国人の期待するニッポンの風景の中で浮きまくってる姿を楽しむ映画。
これ、一歩間違うと日本人の反感買いまくりになる可能性大ですが、セガールも日本人スタッフもわかった上でやってる空気が伝わってくるので、全然気になりません。むしろ楽しめちゃいます。

ところでセガールのあやしげな日本語、というか大阪弁(十三出身)は実際にはもっと上手なはずなので、今回はわざとあやしく演じてたような気が。
鑑賞前にあちこちでセガールの日本語が聞き取れないとか何言ってるかわかんねー!って感想を見かけましたが、思ってたより悪くなかった。それより入れ墨の彫り師の日本人兄さんの方が早口で何言ってんのかわからんかったよ。

あとヒロイン役のナヤコ。この人はどうやらセガールに抜擢された無名の女性らしい。セガールは何を考えてこの人を起用したのでしょうか。どうしようもない素人演技にくわえ、英語の発音が悪かったのか容姿だけの出演しかさせてもらえなかったのか、全編通して口パク。ひどいっす。ただしこのヘボさ加減と空気の読めない変なセガールのバカップルはお似合いでした。ユビキリゲンマーン♪とか嬉しそうに。今時高校生カップルでももうちょっとマシな付き合いしてると思うけど。

とにかく目だって「ヘン」なところばかりでストーリーもないに等しいんですが、どうでもいいような細かい部分はけっこうこだわってたようでした。小物関係とか小ネタとか。序盤ブルース・リーの燃えよドラゴンのワンシーンを思わせる箇所があったり、ロケ地もなかなかの選択だったり。小ネタの域を超えてるような気がするセガールの実の娘のシーンもあったっけ。
タイトルにもあるサン(太陽)。時々真っ赤に燃える夕日のシーンが直接的・間接的に出てきてたり、ちょっと古き良き時代の映画な雰囲気も。懐かしき仁侠映画の世界。

とにかく日本=太陽の国っていうイメージを好意的に描いてくれてて嬉しかった。日本側の配役にもそれがあらわれてて、やたら豪華なキャスティング。寺尾聰と伊武雅刀は本人的には完成作品を観て「やっちまった⋯」とガックリきてしまったかもしれませんけど。
2人ともやたら重みのある真剣な演技で、この映画では浮いてるんですよね、見事に。セガールとの全くかみ合わない演技が笑えます。でもいいんですよ、出演してるだけで作品の質がグーンと上がってますから。この2人の価値は計り知れない効果をもたらしてると思います・・・思いたい。

ジャンル的にはアクション映画だと思うんですが、アクション自体はわりと少なめでした。途中のチラホラと、ラストの大掛かりなアクション以外はほとんどなかったです。が、やっぱりセガールのアクションは重さがあって品の良いかっこ良さというか様式美を感じるいいものがあります。今回は刀での格闘でしたが、アップを多用しつつテンポある展開。
悪役大沢たかおとの対決シーンは美しかったんですが、もうちょっと長かったら良かったなぁ。障子とかお箸とか小道具の使い方もこじゃれてました。

ところで客層は予想通りおじさんが多かったんですが、場内ガサガサ(おつまみ食べてた?)する音以外はおしゃべりもなく作品の空気もあって一種けだるい空間でした。ところが最後の方でセガールが大声で「バキヤロー!」と叫んだところでついにどこかのおじさんが「ブブッ!!」と吹いたんです(笑)その途端みんなそれまで我慢してたものがこみあげ、つられていっせいに爆笑。この時凄い一体感を感じてしまった。ああ、みんな同じこと思ってたんやなぁ・・・(笑)
映画館で観ることができて本当に良かった!

有楽町スバル座(閉館)
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