だらしない母と、それに反発しながら同じような道を辿る娘という基本的な設定の上で、ストーリーが行き当たりばったりに進んでいく。これは田中小実昌の原作通りかも知れないけど、紛れもなく神代辰巳ワールド。
見事な映画っぷりだ。たとえば、仄暗い喫茶店の中で会話しているうちに、手前が次第に明るくなってくる。屋内の狭い空間の会話で切り返しではなく、鏡を使って会話する二人を同時に見せる。一方で、舞台でキレよく演じる殿岡ハツ江と、それに目を輝かせる観客の娘はあたかも会話のような切り返しを見せる。そしてラストは、殿岡ハツ江が街中を歩いてフレームアウトすると、カメラが動いてビルの中で踊っている男女たちを捉える神ショット。