ほーりー

気違い部落のほーりーのレビュー・感想・評価

気違い部落(1957年製作の映画)
4.2
シネマヴェーラ渋谷は駅からちょっと歩くし、人混みがひどいしで、滅多なことでは行かない映画館なのだが、さすがにこの映画が観られるのなら行くしかあるまい。

絶対ソフト化&テレビ放映できない作品。その名も『気ち……ピーーーーーーーー(自主規制)』❗

もはや反則のようなタイトルで、劇中の森繁のナレーションにも何度もキーワードとして出てくるのだが、そのたんびに客席から笑い声が聞こえてきた。

舞台は東京から十里以上離れたど田舎。

村の親方である山形勲と百姓の伊藤雄之助は犬猿の仲だったが、山形の息子である石浜朗と伊藤の娘・水野久美は相思相愛の仲だった。

ある時、村で急に大きな出費をすることになり、山形や彼の博奕仲間である藤原釜足、須賀不二夫、信欣三、三井弘次たちは村の神社裏にある材木を売ろうとする。

しかしその土地はかつては伊藤の地所で、証文一枚で村に寄付しただけで登記ではまだ彼の持ち物だった。

伊藤の猛抗議にもかかわらず、山形たちは勝手に木を伐採して売ってしまい、伊藤は山形と取っ組み合いの喧嘩をする。

これがきっかけで伊藤家は村八分されることになったのだが、そんな矢先、娘の水野が結核で病床に臥せってしまう。

日本の村社会を痛烈な毒気をもって描いた本作。

ストーリーを読んでもわかる通り、本作は「気違い」(あ、つい言っちゃったw 言ったもんはしょうがないよネ)を描いた作品にあらず、村のしきたりや金銭欲によって右往左往する村人の「気違い沙汰」を描いた作品である。

最初のうちはバイタリティーあふれる村人たちの行動に思わず笑ってしまう。特に村の宗教改革のくだりには声あげて笑った。

それが伊藤が村八分されてからは笑っていられなくなる。

ラストには石浜朗が言うように「こんな村さっさと捨てちゃえば」と思いたくなるのだが、それを「日本中どこへ行ってもここと同じだよ」と返した伊藤の言葉がズシッと胸に重くのしかかった。

昭和の怪優のひとりである伊藤はじめ、淡島千景、山形、藤原、清川虹子、三好栄子、三井、信欣三と個性豊かな面々が揃っているが、なんといっても印象的だったのは酒好きの巡査を演じた伴淳三郎。

普段は酒で買収されるような頼りない警官なのだが、取り返しのつかないことをした伊藤を一喝するシーンなんか思わず観ているこっちも背中がピッとなるぐらい気迫があった。

■映画 DATA==========================
監督:渋谷実
脚本:菊島隆三
音楽:黛敏郎
撮影:長岡博之
公開:1957年11月26日(日)
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