けんたろう

ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔のけんたろうのレビュー・感想・評価

5.0
漂白ジヽイが強すぎる御話し。


一作目と三作目との架け橋たる今作。物語りは彌〻旅から戦ひへ。舞台も、山々の見ゆる広大な大地から人間の居城へとシフトする。

たゞ前作から大きく変はるのは、他でもない、フロドのこゝろである。指輪の力に蝕まれ、醜き慾望に支配せられ、挙げ句は大事な友への疑心さへ植ゑ付けらるゝ此の哀れなる運命、或いは性。人間である。卑しき姿へと落ちぶれゆく其の様は、甚だ悲し。

然しながら其んな彼れへと投げ掛けらるゝサムの言葉は、究極美しい。
光り無き道を歩まねばならぬ、過酷極まる此の旅路。暗黒のなか、見ゆる先にも希望は無し。終始闇に苦しめられ、卑俗の徒として生きざるを得なくなつた己れに対しても亦た絶望の念が起く。然し其れでも──、其れでも前へ前へと進まねばならぬのだ。嗚呼、人生! 壮大な叙事詩に映ぜらるゝ我れらが人生よ!
又た彼れの言葉はカツトバツクに因りて一入活きる。即ち、全く別の、ゴンドオルとロオハンと森での其々の闘ひが究極重なるんである。中でも、人間の勇敢なる反撃。余まりに圧倒的なる展開には、もう感動と昂奮が収まらぬ。成るほど希望とは、自ずと見ゆるものではなく、自ずから見るものであらん!
究極の友情、そして栄光たる人生! 嗚呼、込み上ぐるものが有る。

惜しむらくは、ラストがやゝ性急なこと。此れは果たして二作目の宿命なんかしら。
とはいへ、矢張り珠玉の一作。此処から人類の、壮大なる反撃が始まる。嗚呼、ありがたう友たちよ。私しも闇へ立ち向かはん。