幕のリア

新・平家物語の幕のリアのレビュー・感想・評価

新・平家物語(1955年製作の映画)
4.4
監督 溝口健二
原作 吉川英治
主演 市川雷蔵
撮影 宮川一夫
大映カラー總天然色映画

屋外ロケ、膨大なエキストラ、造り込み豊かなセット、色彩に富んだ衣装、絢爛な美術に目を奪われる。
とは言え、やはり溝口作品は女性の機微を繊細かつ大胆に描く作品の方が良いには違いない。
吉川英治原作ゆえ仕方ないが、平安末期の妖しさや禍々しさやカオスは見れず、若者の成長譚で現代劇調で少々興が削がれた。
雷蔵の鬼瓦権造ばりの太眉には最後まで違和感。
一人赤線地帯の木暮実千代(中に着てるのチューブトップ?)。
進藤英太郎の声の響き、ほんと好き。

などと雑念混じりで序盤は少々乗り切れなかったが、中盤からヒートアップ。

祭りの長回し。
何百人ものエキストラと縦横無尽な踊り。
壮観という言葉しか出ない。

そして邪悪な僧兵供の蜂起。
松明含め夥しい数は圧巻。
そして、単身対峙する清盛に拍手喝采。

三部作予定だったとの事。
何故に続きが撮られなかったのか?
予算に見合う興収が得られなかったのか?
今ならどれほどの予算がかかるのだろう。

往時の日本映画文化が完全に絶たれた現在に改めて絶望…
幕のリア

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