のんchan

コード・アンノウンののんchanのレビュー・感想・評価

コード・アンノウン(2000年製作の映画)
3.9
ミヒャエル・ハネケ作品鑑賞5本目。
日本では未公開だったんですね。
ハネケは理解に苦しむ内容が多いものの、今作はまた変わっていた。
幾つかの物語があり、それぞれのシーン(1〜3分程度)が終わると暗転し、また別の話へと変わる。技法が独特のため、観る人によっては戸惑って難解と感じてしまうかも?しかしそれらの話は何処かで繋がっている仕掛けになっている。私はとても新鮮で面白かった。


OPは聾唖学校でのシーン。1人の子が皆の前でジェスチャーをする。それを必死に考えて答えを探す子供たちの表情が良い。
EDでもまた違う子供が真剣に身振り手振りで表現していてアートのよう。

アンヌ(ジュリエット・ビノシュ)は女優。恋人ジョルジュは戦場カメラマンでコソボから帰国する。その間にジョルジュの弟ジャンが農家を継ぎたくないと田舎から家出してアンヌたちのアパートを訪れる。今どきの若者と父親の関係。

ジャンが不貞腐れて街中で物乞いのマリアにゴミを投げ付ける。それを見て憤った黒人青年アマドゥがジャンに謝れと諭すが殴り合いに...警官が中に入るが悪くないアマドゥが手荒く扱われてしまう。マリアがその場から逃げようとしたのは不法入国していたから...

アンヌを中心とした5人の日常がそれぞれ断片的に描写され、アンヌに直接的、間接的に関わってくる。
日常で何気なくとっている行動ですら、相手によっては差別や偏見、人種や貧困に関わっているかも。そこはフランスらしく、移民たちの不安、生き難さも日常の中にある。

人種だけでなく、恋人関係でも微妙な"言葉と心のズレ"が起きたりする。アンヌとジョルジュの些細な喧嘩から、お互いに発見があり良い方向へ向かうのが良かった。
ジョルジュの写す顔写真にはそれぞれの心が写っていた。

断片的な映像を意図的に羅列したことで、返ってハッと理解に繋がるように思えた。
難しいようでとても丁寧な作りとさえ感じられた。

敬遠せずにぜひご覧になってみてください。
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