最も難解で壮大なハネケ映画。
実はテーマがイニャリトゥの「バベル」に近いが、こちらの方がよりコンパクトに収まった印象。
女優、その義弟、不法移民の女、黒人の移民の男。この4人が交わる冒頭の長い長い場面。その出来事の後、彼らはどうなるのか。
全編、ほとんどがワンシーンワンカットである。一つのシーンにつき一つのカットしか与えられず、各シーンは暗転で、かろうじて繋がっている。
そして、それと同様、各登場人物も、希薄な関係性により、かろうじて繋がっている。しかし、ある者はすれ違い、ある者は去り、ある者は別れ、うまくいかない。それらを繋ぐのは、電話や手紙、あるいは会話などのコミュニケーションだが、肝心なことが伝わらない。
コソボ紛争や移民問題、親子関係、または男女の不和、あるいはこの映画の難解さ。無関係に見えるこれらが、コミュニケーション不全(または不足)という共通した原因によるものであることから、人間の難しい側面が伺える。
単調な太鼓のリズムが響く中、物語は収束していく。聾唖の子供達は希望か、絶望か。