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白い巨塔のCANACOのレビュー・感想・評価

白い巨塔(1966年製作の映画)
3.4
1966年公開の山本薩夫監督作品。山本監督はのちに『華麗なる一族』(1974)、『不毛地帯』(1976)も撮っている。原作は山崎豊子。主演・田宮二郎。

卓抜したオペ技術と知識をもつ天才だが、不遜で野心家の浪速大学第一外科助教授・財前五郎と、実直・誠実・慎重な同病院第一内科助教授の里見脩司を軸に、封建的な大学病院の内部と医療事故を描いた意欲作。

2003年の唐沢寿明主演ドラマ版、1978年の田宮二郎主演ドラマ版を見たうえで鑑賞。この2作を見てから本作を見ると、鑑賞後の余韻がかなり違う。

本作のラストは崖から突き落とされるような衝撃で、胸糞感広がる。予習せず見たので「完」という文字がバーンと出たとき、ちょっとクラッとした(笑)。
白い巨塔の主要人物とそれぞれの価値観、各エピソード等々、とてもわかりやすく描かれているので、はじめの1本としてみるのはよさそう。

原作の正編のみを映像化している本作に対して、唐沢・田宮ドラマ版は、1969年に刊行された続編までを映像化している(岡田准一版も続編まで)。原作者の山崎さんは正編で完結させていたが、あまりに反響が大きかったため続編を書いたという。「小説といえども、社会的反響を考えて、作者はもっと社会的責任をもった結末にすべきであった」(原作あとがきより)という内容だったらしい。

作者に何か言わずにはいられないほど読者がミザリー化(言い過ぎ)したのは、本作のもとになった正編があまりにリアルで、どの組織にも共通する構造があって、正直者が馬鹿を見る歪な社会を冷静に書き切っていたからだと思う。読者の声に応えて、一度終わらせた小説の続編を、質を落とさず書き上げた山崎さんは凄い。

さらに映像化した本作がとてもよくできていたので、田宮さんは続編まで演じることを熱望したのだろうし、今なお何度も映像化されているのだと思う。今なら沼というのだろうが、そのくらい白い巨塔沼は何度でも見られるほど深く、今も変わっていない。
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