プリオ

ビッグ・フィッシュのプリオのレビュー・感想・評価

ビッグ・フィッシュ(2003年製作の映画)
4.5
ホラ吹き親父が語る冒険物語。

物語的にも映像的にも美しく、現実と虚構の境目が揺らいだ世界観に引き込まれます。

映画というフィクションが好きな自分にとっては、フィクション(嘘)の持つ力、そしてその是非について考えさせられました。

そして、自分ごとだが、学生の頃に家庭教師として家に来ていた外国人のことを思い出した。

彼は毎週映画のDVDを何十本も持ってきてくれる方で、家族みんなで英語を教えてもらってました。

ただ、明らかに嘘だろって話をする人でもあり、しかも話出したら止まらないので、家族みんなで固まって彼の話を聞き流す、そんな時間が結構な頻度でありました。

でも、今思えば、あれは彼なりの一つのコミュニケーションであり、嘘を嘘だと受け入れた状態でお話をする、そんな風にもできたんだろうな、と振り返ります。

我が家の日本人的なノリの悪さ、尊重や思いやりの無さ、相手の話を受け入れる姿勢の欠如、そんなものが楽しいコミュニケーションを邪魔していたような気がするのです。

そう、違う「在り方」もあったのではなないか、と思ったりするのです。

冷笑的に距離を空けるのではなく、主体的に距離を縮めていく。嘘を拒絶するのではなく、嘘を受容する。そうすることで、自分も相手も共通の嘘の枠組みに入り込み、その場を共有し楽しむことができる。そして、そんな時、人は冷笑ではなくなり、心から笑うことができるのではないだろうか。

嘘は人を傷つけることもあるし、関係性を破壊することもある。でも、その一方で、使い方次第で、人を救うこともできるし、関係性をつくり出し、絆を生むこともあるのだろう。


最後にダーッと映画の話を。

とにかくティムバートンの世界観全開映画で、彼の作品の中でもかなり上位に入る程に好き。

ユアンマクレガーとアリソンローマンのカップルが最高だし憧れる。

親父の回想シーンがファンタジーに描かれ、息子のシーンはリアルに描かれる、その対比も素晴らしい。

綺麗過ぎるラストという見方もあるが、心洗われるし、こんな映画を好きでありたい、そんな風に思える作品です。


<追記>
嘘も本当の垣根を超えた、コミュニケーション。

嘘or本当のものさしではなく、面白いor面白くないのものさし。

真実って、ない。
あるのは、興味。
興味をもつのは、愛。
プリオ

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