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武器なき斗いのmhのレビュー・感想・評価

武器なき斗い(1960年製作の映画)
5.0
右翼系テロリストの凶刃に倒れた左翼系政治家ヤマセンこと山本宣治の半生記。
同志社大学の講師→労働運動の指導→労働農民党の党首として活躍→治安維持法をはじめとする大弾圧→右翼団体の活動家に暗殺されるという流れ。
教科書に載っているような表向きのものではなく、もっと労働者より(われわれより)の視点で日本の近代史を語り直してくれる。
労働運動の実際と、その弾圧っぷりが実に具体的。
・官憲と癒着している資本家側。
・集会には警察官・刑事が目を光らせている。
・壇上にも「臨官席」なるものがあり、弁士の演説に目を光らせている。
・問題がありそうだと「弁士注意!」「弁士に注意!」と演説を遮る。
これまでのどの映画でもやってくれなかった、描写が盛りだくさんで興味しかわかなかった。
同志社ってたしか左よりの大学だったのになぁとか、これまで得た知識を必死で掘り起こしながら見たけど、それ以上のトピックを流しこんでくれる。
なにしろ東宝争議の旗振り役が監督なので、思想的背景も真っ赤で素晴らしい。
「偉大なる中国国民」とか違和感あるナレーションだけど、1960年の時点では革命に成功した/地上の楽園を実現したひとたちなので、共産党員たちにいわせればそれは誇張じゃないんだよな。(百花斉放百家争鳴1956-1957は過去だけど、まだ文化大革命1966-1976は始まってない)
ラストは現代でカラーになるという仕掛けも良かったけど、いちばんのうりはエキストラの大量動員で、活気あふれる労働者の集会を再現していたところかな。
完全に埋もれちゃってるけど、これはめちゃくちゃ面白かったです。
mh

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