ねまる

傷だらけの男たちのねまるのレビュー・感想・評価

傷だらけの男たち(2006年製作の映画)
3.7
『インファナル・アフェア』の
監督脚本チームで、
どこか近いものを感じていた本作。
直後に観たので、同じ人たちと、同じ名前が重なりまくり、誰が誰だっけ?と混乱していたのは確か。
まだ慣れてないね、私も。

『インファナル・アフェア』の切なさは、
私的には想定外の角度から、
ラストになって放り込まれる悲しさで、
1度目は驚嘆して、2度目分かってから観るとより切ないみたいなところがあったんだけど、
これは、どんな結末が待っているのか、
ある程度察してしまった上で、
自分の解釈と、ストーリーが同時に同じ方に転がっている、分かっているのにその転がりを止められない虚しさ。
2度目結末ありきでの切なさの回収とは別の感情があるよね。

信頼出来ない語り手は
どちらの方にも手の平を返すことができて、
アル中のボンと、
睡眠薬を飲むヘイの奥さんの立場では、
観客を意図的に紛らわせるのは、
推理ドラマとしてはどうなんだと思うけど、
結局この作品のテーマは、
事件の謎を解くことではなく、
復讐と巻き込まれる家族なんだろう。



ここからネタバレ


ヘイは、どんな想いで、
警察を辞め、アル中になったボンの側に居続けたんだろう。
恋人が亡くなり、自暴自棄になった男に、家族を殺された自分を重ねたのだろうか。
その間に、自分は着々と、復讐の準備を進めているのに。
ボンに真相を解いて欲しかったのかな。
自分の復讐物語の探偵役になって欲しかった。
人間としての心などとっくに捨てたと思っていたのに系悪人。
自分は存在していない人間だと自分では思っているくせに、ボンにとってはいつまでもボスなんだろうよ、罪な男。
トニー・レオンのやる悪者って、憎い〜、このやろー、ではなく、悲しさと虚しさだけが残るよね。
あんな目をされたら。
ねまる

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