「エンター・ザ・ボイド」
ギャスパー・ノエが衝撃の問題作「アレックス」の7年後に監督した東京が舞台の作品。
感想を書くのが難しい。ストーリーはあるにはあるけど、そこまでしっかりとした話ではないし、本作のアートチックな演出を引き立てるために付けられたいわばおまけのようなものでしかない。
ドラッグ、セックス、バイオレンスの三拍子が揃っているところはいつも通りなのだが、この三つと東京の親和性が高いことに驚く。
「ロスト・イン・トランスレーション」でも感じたことだが、洋画で描かれる「本物の東京」は「ブレードランナー」に出てくる都市のような近未来感と異質な雰囲気がある。
魂の浮遊だったり、輪廻天性だったりと、いろんな要素が絡んできている作品だが、ラストのラブホテルのシーンがすごく良い。
部屋の中で各人が各々の性行為に耽るシーンが数分続くのだが、光の演出が特徴的な作品だけあって、モザイクの近い方が非常に興味深かった。
最近、雑なモザイク編集を施した作品を観たばっかりだったので、このシーンの表現の巧さには意表を突かれてしまった。
2回目を観たいかと聞かれたらかなり微妙な作品ではあるが、演出の面においては他に例を見ない、「さすがはギャスパー・ノエ!」と声を大にして言いたい作品だった。