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ふるえて眠れのhorahukiのレビュー・感想・評価

ふるえて眠れ(1964年製作の映画)
3.9
過去からの解放!

9月は爺婆⑦

アルドリッチ監督が『何がジェーンに起ったか?』に続きベティデイヴィスを主演に招いた婆vs婆もの。本当は再度ジョーンクロフォードを相手役にしたかったらしいのですが、当時病気だったためにオリヴィアデハヴィランドをキャスティングしたようです。どちらにしてもオスカーvsオスカーという頂上決戦感がすごい!

妻がありながら他の女(シャーロット)と不倫した男がパーティ会場で殺される。血だらけで現れたシャーロットが疑われるも不起訴に。それから37年後、父亡き後も同じ豪邸に老メイドと2人で住んでいるシャーロット(デイヴィス)だったが、公共事業のために立ち退き命令が出る。それに不服なシャーロットは役所と全面対決するために古い友達ミリアム(ハヴィランド)を呼ぶ。だが、味方のはずのミリアムは地元の医師と結託し次第に不審な行動を見せ始める…。

『ホームボディーズ』でもそうだったけど、立ち退き要素は爺婆ホラーではあるあるなのかな😂『ブラッドハウス』と『誰がルーおばさんを殺したか?』は両方ともジュブナイルだったし、設定被りが結構あるのが面白い!

『サイコ』的な殺害シーンから『レベッカ』へと繋いでいくヒッチコック感。そしてキャッスルの『地獄へつゞく部屋』のような雰囲気すらも感じとれる「お化け屋敷」を作り上げていく。冒頭、立ち退きをさせようとする工事業者に、いきなりショットガンをぶちかますデイヴィスお婆ちゃんのイカレたパワフルさにキタキター!とワクワクしてたら、そこから一転、「お化け屋敷」になるに従ってどんどん弱々しくなっていく…。最凶無敵なベイビージェーンハドソンを見た後だから何かショックだった…😭

でもこれは、お化け屋敷化が彼女の心の奥底に向かってメスを入れていく過程へと転嫁されるからで、心の弱い部分が白日の元に晒されてしまうから。その過程において、父が残した豪邸が「お化け屋敷」=過去の牢獄であることが次第に明らかになってくる。『何がジェーンに起ったか?』でも過去の囚人としてのデイヴィスお婆ちゃんが描かれてたから、本作でもアプローチは同じなのだけど、その出口に相違があるのはデイヴィスお婆ちゃんを思ってのことなのかも。完成した何がジェーン…を見たとき、あまりにも酷い自分のメイク姿を見て泣いちゃったらしいし…😓

展開が煮詰まると新しい人物・要素を投入してテコ入れを図り、その繰り返しによって蓄積されていく複雑な人間関係と明るみになっていく過去の真実を全てクライマックスに向けてまとめ上げていくうまさは、『何がジェーン…』でも見られたけれど、それがアルドリッチらしさなのかな。めちゃオシャレなタイトルコールもあったし😂

あと、あちらほどではないけれど特徴的な形状の階段を利用した多様なアングルやキャラクターの運動の象徴性が面白いし、モノクロならではの顔に濃くおちる影により、覆い隠すことで表情の機微を調整するゾクゾクする演出や異界化=心象空間化を決定づける意図的に作り出された「過去」と割れるガラスや流れる血とか凄すぎて鳥肌立つレベル。『何がジェーン…』ほどではないけれど、こちらも面白かった!というか展開的にもジョーンクロフォードで見たかったわ…。
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