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英国式庭園殺人事件の708のネタバレレビュー・内容・結末

英国式庭園殺人事件(1982年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

ピーター・グリーナウェイのレトロスペクティヴにて観ました。

ヨルゴス・ランティモスの「女王陛下のお気に入り」を観たとき、あー、これは絶対にグリーナウェイのこの作品からインスパイアされてるなぁと思ったのですが、ヨルゴスがインタビューでグリーナウェイにインスパイアされている旨を語っていました。正解。

「殺人事件」なんて邦題がついてるもんだから、誰が犯人なの???となってしまったけど、元々フーダニットのミステリーという訳ではないらしく、犯人が明示されていません。犯人が解き明かされてないからモヤッとする人、多いんじゃないでしょうか。ちなみにこの邦題はフランス語のタイトルをそのまま訳したものだそうです。

女への相続を認めず、相続させるならサラの息子にという意向の大地主ハーバート。

その女たちであるハーバート夫人のヴァージニアと娘サラ。

サラの夫でドイツ人のタルマン。

ハーバートの親友で、一時はヴァージニアと婚約までしていた財産管理の公証人ノイズ、庭師クラーク、近隣の大地主シーモア。

…といった面々が主にいるわけだけど、ハーバートが死ぬことによって、誰が利益を得てもおかしくなさそうな状況の中、誰が損をするのかを考えると、自ずと犯人が浮かび上がって来るだろうとグリーナウェイが観る側にゆだねているようでした。

画家ネヴィルはあくまでも、殺害の証拠を描き残すために雇われたわけだけど、子供ができなかったサラを妊娠させるという、種馬的な役割まで果たさせるのはさすが。女は怖い。

グリーナウェイ作品では縛りやテーマがある作品が多いですが、ここでの縛りは枠や構図。とにかくグリーナウェイが、庭園の美景を完璧な構図で切り取っていきます。スクリーンの枠、その中にあるキャンバスの枠や製図用具の枠など、すべての枠を完璧に使いこなして、完璧な構図を切り取っていきます。でも、そんなこだわりや美意識なんてクソ同然とばかりに、完成した絵をすべて燃やしてしまうのが皮肉でグリーナウェイっぽい。

画家ネヴィルに契約の話が持ちかけられる最初の薄暗いパーティのシーンの閉塞感から、美しい庭園のシーンへ切り替わったときの解放感、主人が殺されるビフォアアフターでの衣装の白から黒へのコントラストも効果的でした。
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