新東宝から転じた大空真弓が、そのファム・ファタルなアイドルぶりを炸裂させる業界ロマンス編。原作はなんと藤原審爾。

叔父の脚本家・菅原謙二と演出家・田宮二郎の間を自在に渡り歩き、翻弄していく奔放わがまま娘ぶりは、さながら若尾ちゃんか緑魔子か。
大空真弓は新東宝時代から、珍妙な役の方がぴったり来る不思議な女優さんである。
脚本の笠原良三はコメディ作家故なのか、タイミング等が笑えて軽妙。
左幸子が絶妙に利いている。
テレビ局が主な舞台で、森山加代子の主題歌が耳につく。暫く歌ってしまう。

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無意識な色気と溌剌とした性格で男を魅了し翻弄する小悪魔女性の物語だが、東宝や松竹だったらコメディっぽくなりそうな題材が大映ならではのアダルトな雰囲気が絡むことで不思議な魅力を持つ、緊張感のあるシリアスなドラマに仕上がっている。そして恋愛要素あり、主人公が芸能界で活躍する立身出世要素ありと多彩なドラマを90分でまとめる職人脚本家・笠原良三の力量に感服。

小悪魔キャラの大空真弓も良いのだけれど、それ以上に良いのが彼女に魅了される菅原謙二。菅原特有の朴訥な演技がダメな中年男キャラをよりリアルにしており、年甲斐もなく若い女に惚れ込み、大空に愛想を尽かされてもしがみつく姿に男の悲哀が滲む。大空に惚れる正統派の二枚目を素直に演じる田宮二郎の初々しさも印象的。

大空と田宮、両方とも痛みを残したまま終わるラストのビターさも心に染みる。

面白い。正直いうと、感動した。
大空真弓の役柄にはなにか真実がある。