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春香伝のJeffreyのレビュー・感想・評価

春香伝(2000年製作の映画)
2.5
「春香伝」

冒頭、季朝時代。南原府の若様と絶景の広寒楼。美しき娘、深まる愛、悲しい知らせ、辛い別れ、新任の長官、ゆるぎない意志、手紙、婿の帰還、密使の招待、大団円。今、命をかけて永遠の愛を貫こうとする二人の姿が映し出される…本作はイム・グォンテク監督が二〇〇〇年に監督した愛の世界を描き、世紀を超えて語り継がれる十六歳の恋。生きた楽器、パンソリ(韓国の伝統芸能)の歌声が豊穣の物語へ誘う。太陽の如く月のごとく美しい乙女、人の姿はしているものの正しく仙女なりと言わんばかりの作品である。


さて、物語は舞台は季朝時代。妓生の娘である春香と代官の息子である夢龍の、身分を超えた恋。二人を引き作周囲の人間や社会制度にも決して屈せず、命をかけて永遠の愛を貫こうとする春香と夢龍であったが…と簡単に説明するとこんな感じで、韓国では誰もが知る国民的古典が、パンソリの魂の歌声と相まり熱く心を揺さぶる恋愛劇である。本作は十八世紀初頭に生まれた韓国古典の最高傑作と言われ、これまでたびたび小説や映画、演劇、まだん劇、アニメーション、オペラなどで幅広く題材とされてきた国民的な恋物語だそうだ。映画化は本作が十四回目で、これまでの作品はあくまで小説をベースに制作されてきたらしい。今回の作品は監督が本作を本来のパンソリによって語り継がれてきた物語であることに改めて着目し、主人公の男女の物語と並行して、韓国の国唱人間文化財でもある人のパンソリによって全編が歌い次がれている点が、これまでの本作とは決定的に異なっているそうだ。

制作にあたっては、膨大な歴史的資料と専門家たちの助言を得た徹底的な時代考証の上、衣装一万二千着、エキストラ八千人人、撮影ー年、制作費三十億ウォン(約三億円)をかけて物語の舞台である南原市をロケ地に歴史的遺産を完全に再現したそうだ。この執念とも言えるリアリズムの世界大をマーティンスコセッシ監督のハリウッドからもオファーを受ける撮影監督が撮影して美しさと深みのある気品を与えた。なお本作は五十三回のカンヌ国際映画祭のコンペ部門に出品し、韓国映画史上カンヌ映画祭のコンペ出品最初の作品となったそうだ。
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