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驟雨のniのレビュー・感想・評価

驟雨(1956年製作の映画)
4.5
マンネリ化した夫婦の局面を、都会を舞台に、近所付き合いの煩わしさ、リストラ、生活の苦しさ、夫の病、階級差などの問題とともに描いている。
だが、この驟雨も、「妻よ、薔薇のようなれど」と同じく、コミカルな演出に溢れている。

日本地図を書かせて、きゅうり、だとか。
頂き物のそばを速攻頼んで、隣人がそれを何度も目撃するとか。
蕎麦と間違えてうどんを持ってくる、とか。
非常に、観客を飽きさせないような工夫を感じる。そして現代の感性でもくすっと笑ってしまうような非常に上品なユーモアである。そこが大変気に入った。
作家のタッチに、余裕と気品と鷹揚さがある。そして柔らかさがある。器が違う感じさえする。

テクニカルなことでいえば、
たとえば
隣家との対比が面白いし、かなりシニカルな演出も特徴的だった。

男同士が、歯磨きしながら、少しでも相手より前に出ようとする男の見栄っ張りさ。
鍵を開けるのが夫か、妻か。
など。

男と女、という社会的テーマをセリフではっきりしゃべっているのも、やはりわかりやすい脚本だと思う。 

たとえば、

「今や男ってのは潰しが効かん。これからは女の時代ですよ、奥さんみたいな綺麗な人は、どんどん外へ出ていかないと」
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