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J・エドガーのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

J・エドガー(2011年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

渋くて良い映画だった。

FBI初代長官J.エドガー・フーバーの人生を描いた伝記的な映画なのだが、その描き方が秀逸。現在の年老いたフーバーと彼が語る過去の出来事が交互に描かれていく構成。しかし終盤、彼が語っていた過去は彼の手柄ではなく、部下たちの功績だったことが明らかになる。ここで一気に彼の劣等感と虚栄心があらわになり、観ていて何とも切ない気持ちにさせられるのだ。特殊メイクで若者から老人までを演じたディカプリオの演技もさすがの一言(正直メイクは低レベルだと思うのだが、演技でもたせていた印象)。

そしてフーバーと彼の相棒である副長官トルソンとの関係性の描き方が素晴らしい。同性愛的な感情を持ちながら、今よりさらにタブー感が強かったであろう当時、彼らが直接的にそれを見せることはほとんどない。しかしほんの一瞬まみえるそれがとても切なく美しいのだ。上司と側近の部下という関係でありながら、結局生涯を共にした二人の一生はとても儚く、何というかこの映画は恋愛映画だったのではないかと思わせるほど。母親との深すぎる愛や、女性秘書との強すぎる信頼感など、人間関係の描き方も全体的にとても好みだった。

多くの政治家の秘密ファイルを抱え、アメリカを守る存在でありながらアメリカの脅威ですらあった男。現代もなお生きるFBIの科学捜査技術の礎を築いた偉大な人物。しかしこの映画では彼を"フーバー長官"ではなく一人の人間"J.エドガー"として等身大に描いている。良作。
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