シゲーニョ

七人の侍のシゲーニョのレビュー・感想・評価

七人の侍(1954年製作の映画)
4.3
第二次大戦後10年も経ていない時代に作られた映画。
上映時間3時間オーバーでモノクロのスタンダードサイズ。
聞き取りにくいどころか、よくわからない日本語が頻繁に飛び交う台詞。

だが、今観ても全く飽きることなく、やはり面白い。

圧倒的な「画」の凄さに惹きつけられると共に、物語を強く牽引しているのは、登場人物すべての人物像とその背景を丁寧に描いていることだと思う。

筋立ては「百姓たちに雇われた侍たちが百姓たちを助ける」というシンプルなものだが、侍、百姓、そして野武士それぞれの「個人」として「集団」としての実情を本筋に見事に絡ませ、より豊穣に、且つ重厚なものとしている。

勘兵衛の台詞「腕を磨く。手柄を立てる。一国一城の主になる・・・。そう考えているうちに気がついた時は、親もなければ身内もいない」は、夢を打ち砕かれた現実を前に、コメを食えるだけの僅かな報酬で、気高き侍という生業を貫こうとする彼らなりの事情を端的に表している。

長老の「百姓は、日が照っても、雨が降っても、風が吹いてもビクビクする」は、収穫のために自然と戦いつつ、暴力でそれらを奪う野武士とも戦わなければならない恐れの中で、日々生きる農民の苦悩・立場を想像させる。

そして菊千代の「百姓をケダモノにしたのは侍だ!」。
侍になりたがった百姓の子で、もしかしたら野武士にもなり得たこのキャラの言動を時に道化的に描き、本作の主題をより際立たせている。

勘兵衛が、地図で野武士への防御策を見せながら、同時に侍と百姓の交流をカットバックする編集など、好きな場面は数あれど、現時点印象に残るのは、津島恵子扮する志乃の初登場の場面。

髪を洗う臀部を強調したバックショット・・・男臭く泥臭い本作中で唯一「艶」を感じたからか・・・www