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七人の侍のCANACOのレビュー・感想・評価

七人の侍(1954年製作の映画)
3.7
1954年公開の黒澤明監督作品。脚本は橋本忍、小国英雄と共作。上映時間3時間27分。
初老ながら卓抜した剣技と戦略に長けた浪人・島田勘兵衛が、野武士による収穫物の強奪に悩む農民から依頼を受け、集めた6名の浪人とともに野武士と戦い、村を守る物語。

身分が違う侍と農民、その2つの層が手を組むのが面白い。農民チームの心情も丁寧に描かれているが、農民側が依頼主で、侍側がとんでもなく高いリスクを負っている点もユニーク。
志村喬演じる勘兵衛が人情に厚い人で、剣の腕が立つから勝算があったのだろうが、「可哀想な農民のために」というその大義名分すら崩れるエピソードが出てくる。ここが一番おもしろいところで、三船敏郎演じる菊千代がいる意味がわかる。

勘兵衛、勘兵衛の元側近の七郎次、勘兵衛に憧れる若侍・勝四郎、勘兵衛の人柄でついてきた五郎兵衛、ムードメーカーの平八、ルパンの石川五右衛門的キャラの久蔵、そして勘兵衛に全く相手にされていないけど最後の最後でメンバー入りする菊千代。
「仲間集めもの」というのか、目的を達成するために少しずつ仲間を集めていく物語が増えたきっかけの作品だと思うが、人形浄瑠璃・歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』が1748年に初演、『南総里見八犬伝』が1814年に刊行のようで、このあたりが先駆けではないのかなと。

ストーリーは明快だが、台詞が聞き取りづらく、約3時間半あるので簡単には視聴できず、繰り返し見た。このダイナミズムとリアリティは凄まじい。今の映画がここまで汚さやみすぼらしさを出せるだろうか。こんな命知らずな撮影は今の時代にはもちろんできないし、興奮してナポレオンの絵のようになってる馬に乗って去っていく映像ひとつとっても衝撃。負傷した人は山ほどいたと思うが、本物の馬も含め、死体が出なくてよかった。戦場そのものだったと思う。

決戦シーンを撮った現場が阿鼻叫喚だったことは想像に難くない。ホームビデオで息子の駆けっこを撮るかのようなアングルで、豪雨の中、馬に乗った野武士たちを横から竹槍で襲撃し、落馬させていくさまを撮影している。墨汁を混ぜた雨とか、2月の撮影だったとか知らなくても間違いなく極限状態。この命懸けの作品が多くの映画監督に刺激を与え、奮い立たせたのは理解できる。映画を超えた映画だった。
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