Monisan

七人の侍のMonisanのレビュー・感想・評価

七人の侍(1954年製作の映画)
4.6
やっと観れた。

冒頭でこのお話の目的を長老が明示してくれる。なので3時間半近い長尺に対して、すんなりと向き合える感じがある。
RRRとかもそうだったな。

勘違いしていたのは、三船敏郎が無双するものだと勝手に思っていたけど、志村喬が凄まじいな。
最初の盗っ人を捕まえる一連のシーン。通りがかった坊主に剃髪させ、握り飯を持って盗っ人が立て篭もる小屋に入る所は、一瞬時間が止まったかのよう。逃げ出す盗っ人のスローモーションも効いてる。
この一連だけで村人も映画の観客も、あぁこの人だ、って思わせる志村喬の説得力の強さ。

徐々に侍を増やしていく件は、少年漫画の王道のようでワクワクする。
そこでも島田勘兵衛の人の大きさが伝わる。志村喬は笑顔が包容力に溢れている。

侍を仲間にする基準も面白かった。平八は、実力は中の下と評されるも明るい人柄からチームに必要だと判断される。
七郎次は昔から知っている忠実な後輩。久蔵は寡黙な実力者、他者への配慮も出来る。ただ単に強さだけじゃない、役割分担が組織論のようで面白い。
勝四郎と、破茶滅茶な菊千代は本当は勘兵衛の中ではベストな布陣ではなかったんだろうな。それでも決断して村へと向かう。

道中も楽しそう。三船敏郎はなんであんなバネみたいにぴょんぴょんと跳ねる動きが出来るんだろう。

村についてからの勘兵衛の状況把握。川向こうの家を捨てる判断とかも優秀なリーダー的。百姓達を練兵する様子も侍ごとに違っていて楽しい。
菊千代が良かれと思って、隠し持ってた落武者の武具を吐き出させた後の侍達の不快感。久蔵に関しては百姓達を切りたくなったとまで。この辺は武士のプライドか。

また不穏な動きとして、勝四郎とシノの逢瀬。いずれ綻びとなりそうなフリ。

村は準備を整えつつ、野武士の頭数を減らす為にアジトへ。そこで百姓の妻を発見してしまう。それが仇となり、1人目の侍が命を。それが平八というのがまた深い…

いよいよ村での戦に。
最初のうちは想定通りに進んでいくが、種子島の存在や、長老は家に留まるなど少しずつ想定から外れていく。
順調に頭数を減らしていくが、久蔵の種子島奪取に嫉妬した菊千代のやらかし。抜けがけの手柄は手柄ではないのよ、と。
菊千代が持ち場を離れた事で瓦解していく。そして侍も1人、2人減る…

最終決戦前の夜に勝四郎の逢瀬がばれて、父親は激昂。やっぱりね…
でも翌日に、勝四郎も昨晩で大人になったからな、と笑いに変えて村人達を奮起させる勘兵衛、素晴らし過ぎるリーダー。

雨の中の決戦はどうやって撮影してるか、今見てもわからないくらい、馬と人と雨で大迫力の戦闘が続く。
菊千代の最期の意地と。野武士はどこだーとパニくる勝四郎を勘兵衛が諌めて、戦は終わる。

田植え歌を楽しそうに口ずさみながら、元の生活に戻る百姓達。
3人になってしまった侍。勘兵衛がまた負け戦だったな、勝ったのは百姓達だ。これは締まる台詞。
勝四郎も結局、シノにフラれたし。侍達は良いように利用されたって事か。意外な終わり方だけど、強かな百姓と侍達の悲哀のある良いラスト。

もっと激しいだけの映画かと思っていたけど、立場の違う人間模様が描かれていて熱い想いもあるし、建前抜きの本音な心情、台詞も多くて、人が面白い映画だった。

黒澤明、脚本・監督
Monisan

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