Pinch

七人の侍のPinchのレビュー・感想・評価

七人の侍(1954年製作の映画)
4.4
黒澤明フリークでは全くないが、この作品は別格。

戦争という事態に過敏になりやすい今は戦闘シーンに引っかかりを感じないでもないが、全て現実に起こったと言ってよいことで、こうやって生きるしかなかったし、誤解を恐れずに言えば中にはこのような貴重な価値を残すものもあったのだろう。それにしても、まるで本物の戦闘にしか見えない演出は凄い。

実は、昔観たときもそうだったのだが、ラストの田植えの風景が強く記憶に残っている。日本人の生き方の原点なのだろう。それを背景に、勝利を導いた勘兵衛が「今度もまた、負け戦だったな...勝ったのはあの百姓たちだ。わしたちではない」と語り、闘いに対するデタッチ感と否定感をそれとなく滲ませる。彼は戦争に飲み込まれてはいないのだ。一方で大衆はどうか。田植えに力を注ぐ農民たちのパワーの中に戦争の原動力を見出すのは、行き過ぎだろうか。今の日本の指導者たちの中に、飲み込まれない意思を持つ者はいるのだろうか。

最近何かと行き詰まり感があり、勇気をもらおうと久しぶりに観たところ、このような予想しない印象に辿り着いた次第です。
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