翼

ベスト・キッドの翼のネタバレレビュー・内容・結末

ベスト・キッド(2010年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

良い改編と悪い改編混在の迷作。

良い改編
パットモリタは『老師』って感じに対してジャッキーは『親父』って感じなんだよね。現に奥さんと息子を亡くした影をドレに重ねてるし。ヒューマンドラマとしては別の映画かと見紛うほど見応えがある。見事。
ジャッキーがミヤギ役になるほど歳をとったのかと感慨深い。

悪い改編
敵役の少年を最後まで『敵』として描ききったところ。
決勝の最後の一本を決めるラウンドで、怪我した脚を狙えと指示する師匠にずっと従ってきた敵役の少年が、初めて「脚を狙いたくない、あいつと戦いたい」と意志を示す大切な言葉がカット。これにより敵役は人格のないただの「やっつけられるいじめっこ」と化してしまう。これは本当に何故なのだろう。

ジャッキーの台詞にもあるように、敵役の少年も被害者である。情け無用、止めを刺すことが正義と教わってきたのだから。
しかしその歪んだ正義が、立ち向かってくるいじめられっこの心に触れることで揺さぶられ、いち格闘家として正々堂々の勝負を求める。彼自身の心の成長を示す、とても大切な言葉。

原作では。
結局彼は師匠の指示である怪我した脚を狙わず、最終ラウンドは真っ向から戦い敗けるわけだが、
優勝トロフィーを敗北した彼から渡す爽やかな表情には、元いじめっこがいち格闘家として心が成長したことがわかる、ベストキッドを象る最終カットとなる。


ベストキッドの本質は「空手(巧夫)を通じて磨かれる、心の成長」だと思っている。
ドレが歩けないほどの怪我を追ってでも決勝に挑む理由は“まだアイツが怖いから”で、いじめっこに立ち向かうそのマインドにはアイツを怖れて逃げ回っていた少年の影はない。


大人同士のつまらないプライドの代理戦争である武道大会の勝ち負けには意味などなく、
ドレがいじめっこに立ち向かう心を手にすることや、
上記したいじめっこのチョンが格闘家としての成長することに意味がある。

そこを蔑ろにしたら、何も残らないよね。
翼