デッカード

白いリボンのデッカードのネタバレレビュー・内容・結末

白いリボン(2009年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ドイツの架空の小さな村で起こる数々の不可解な事件。

犯人が気になるが映画は狭い社会で起こる妬み、恨み、怒り、蔑みなど禍々しい人間の感情を露わにしていく。

モノクロの映像が味わい深く美しいがゆえに残酷。

第一次大戦前夜が舞台だが後のナチズムの台頭を予感させる。

物語は村の教師の不明確過ぎる回想というスタイルで展開していく。

画面は常に静寂に包まれているようで、音楽も劇中演奏される楽曲のみ。

子どもたちには厳格で居丈高に振る舞う大人たち、男爵や牧師、背徳的な行為を繰り返すドクターなどの姿は欺瞞に満ちていて子どもたちはそれを敏感に肌で感じている。
白いリボンと鞭できびしくしつけらる子どもたちの視線は、そんな大人たちの行いを冷徹に見つめ続ける。

映画は一連の事件の犯人は匂わされるだけで終わってしまうが、子は親の鏡というのが真相なのだろう。

社会的弱者や障がい者への差別や虐待などの子どもの行為は明らかに大人の世界を反映しているし、後のドイツがナチズムに傾く素地がこのような偏向した社会で育った子どもたちによって作られていく縮図でもあるのだが、このような迫害が当時のドイツだけでなく世界中どこでもいつでも起こっているのも事実。
そして子どもは被害者であり、また加害者にもなり得る存在なのだという普遍的問いを考えさせられる映画でした。
デッカード

デッカード