さわだにわか

三人の顔役のさわだにわかのレビュー・感想・評価

三人の顔役(1960年製作の映画)
4.5
川口浩のヤクザとか絶対弱いじゃーんと最初にスクリーンに姿を現した時には脳がニヤけたがこれが意外とサマになっていて、ボスの長谷川一夫とは対照的な貫禄のなさがかえって義理とも人情とも無縁の現代インテリヤクザ臭をリアルに醸す。良い。

命からがら脱獄してきた組長の長谷川一夫を待ち受けていたのはそういうドライな人たちだった。自分の帰還をみんな喜ぶに違いないと何故か無邪気に確信している長谷川一夫にかつての手下みんな渋い顔(情婦の京マチ子も含め)

大御所が行く先々で腫れ物扱いされ邪険にされ裏切られ裏切られ、隠れ家から隠れ家へ(段々とショボくなっていく)たらい回しにされる姿は哀れではあるが、たらい回された先で長谷川一夫を脱獄囚と分かって匿ってやる健気な女を犯そうとしたりするのでやっぱヤクザだもんなぁって感じで比較的同情の余地がない。

もう昔と違う、義理も人情もねぇ、的なことをガラクタ倉庫で弱々しくつぶやく長谷川一夫に唯一信用できそうなムショ友の運送屋・勝新が吐き捨てるように言う。「なに言ってんですか。ヤクザの世界なんて昔っからそうですよ」。

この、任侠の夢から覚めたヤクザ者どもの哀愁にヤラれてしまった。
あとこれ少しだけ若富の『日本暴力団 組長』と印象が被るな。
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