ほーりー

青空娘のほーりーのレビュー・感想・評価

青空娘(1957年製作の映画)
4.3
若尾チャンが可愛ぃぃ!!!

何とチャーミングなことか、何と溌剌としていることか、何と初々しいことか。

素直に若尾チャンと取っ組み合いの喧嘩をする末弟役の岩垂幸彦が羨ましく思えた(笑)

本作の若々しい若尾文子の姿が印象的だったのであとで製作年度を見て思わず!?となった。

この作品、溝口健二の『赤線地帯』の翌年の公開であり、既に若尾チャン当時24才だったのである。いや、それでも十分に若いのだが……。

源氏鶏太原作・増村保造監督・白坂依志夫脚本による青春映画。増村&白坂&若尾の黄金トリオが初めて組んだ記念作でもある。

さてあらすじ。
田舎の高校を卒業したばかりの若尾。

両親や他の兄妹は東京に住んでいて、自分だけは幼い頃から体が弱かったということで祖母とずっと田舎ぐらしをしていた……と聞かされていた。

しかし、彼女には一つ謎があった。それは聞かされた割りには自分は全然体が弱くないということだった。

ある日、祖母が病のために亡くなった。その今際の際に彼女は祖母から父親が外に作った子どもで、仕方なしに田舎に送られたと聞かされる。

若尾は確かめるべく父のいる東京へ行くことを決意する。

ここで彼女が空を仰ぐと、くっきりとした青空(アドファ社のカラーかな?いい色なのだ)が映し出され、白字で『青空娘』のタイトルが大写しになる。

で、ここまでは同時期の増村作品である『巨人と玩具』や『最高殊勲夫人』に比べて演出がオーソドックス。

なので「増村監督も初期は正統に撮ってたんだ」と思いきや、主人公が東京駅に着いた途端に増村節が炸裂する(笑)

東京にいる父親を訪ねると、父(演:信欣三)は裕福な会社社長で、邸宅にはいじわるな正妻(演:沢村貞子)をはじめ、道楽者の長男(演:品川隆二)や高飛車な長女(演:穂高のり子)などクセのある面々ばかり。

沢村は夫が出張中なのをいいことに、若尾チャンを女中としてこきつかう。

まさに和製シンデレラといったストーリー。悲しいことがあっても嬉しいことがあっても決して涙を流さない主人公の姿が印象的だった。

沢村貞子も嫌な役なのだが、長女役の穂高のり子が本当にムカつく女を見事に演じている。何度もテレビに向かって私は「若尾チャン!この女を早く張り倒せ!!」と声が出るほど憎たらしかった。

増村監督の演出も秀逸で、特に若尾と川崎敬三扮する御曹司との卓球シーンのカッティングが見事で、つい何度見返してしまうぐらい格好いい。

そして本作のラスト、優しいけど実はこのいざこざの元凶だったお父さん(そもそもあんな痩せこけた信欣三のどこがモテるのか理解できないのだが)に対して、若尾チャンのけじめの付け方が良く、それまで溜まっていたフラストレーションが一気に解消された。

あとミヤコ蝶々・南都雄二の掛け合いを観ることができるのも今にしてみれば大変貴重な映像だと思う。他にも映画には沢山出ているが、比較的手に入りやすい作品となると本作ぐらいではないだろうか。

「了解!」って手を挙げる清川玉枝も良かった。バーの皿洗いに就こうとする若尾を心配する川崎にビシッという啖呵も格好いい。

■映画 DATA==========================
監督:増村保造
脚本:白坂依志夫
製作:永田雅一
音楽:小杉太一郎
撮影:高橋通夫
公開:1957年10月8日(日)
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