Supernova

月世界の女のSupernovaのレビュー・感想・評価

月世界の女(1929年製作の映画)
3.6
ジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』とはまた発想の違った月世界もの。科学発展途上の時代のSF。近年の作品とはまた違う夢とロマンが詰まっていた。

『メトロポリス』がSFの中でもサイエンスファンタジーだとしたら、本作はサイエンスフィクション。当時にしては最先端の科学技術に基づいた演出が取り入れられたらしい。真の意味でのSF映画の元祖は『メトロポリス』ではなく本作なのかもしれない。

序盤が長すぎる!
本筋が月に行く事だとすると、脇道に逸れた話ばっかで全然先に進まない。
メロドラマ、計画書強奪、友情話。計画書強奪は利権問題や主人公の葛藤といったストーリー面に絡んでくるとはいえ、あまりに使う尺が長すぎな上に『ドクトル・マブゼ』で見たことのある展開だったからついイラッとしてしまった。計画書が強奪されることと月に行くこと自体は別の話だからな。

メロドラマ要らねぇ。ラング、メロドラマ好きすぎでしょ。どの作品にもすかさずメロドラマ要素入れてくるの良い加減辟易してくるな。それが物語に上手くはまっていれば文句はないし、事実メロドラマが功を奏した作品だって山ほどあるけど、本作はそれに該当しない。

ここまで文句ばっかだけど、良い点も山ほどある。特に打ち上げに付随する全てのシーンは観衆の興奮まで見事に描写されていた。リアルさながらの迫力のセットと実際の科学に基づいて行われた打ち上げのシーンは圧巻。船内の緊張感まで肌で感じる事ができる。ミニチュアと巨大セットを巧みに使い分けて映像を撮る技術は時代を考慮するとよく考えたものだなと感心する。このシーンを見るためだけでもこの映画を見る価値はある。ここだけなら5万点あげたい。

面白いと思ったのが船内の至る所に吊り革や手すりが大量に設置してあって、安全管理に関しては完全に本人任せってこと。
あとはこれもご愛嬌で受け流せるんだけど、宇宙服も何も着ていないのが可愛いし、宇宙に何の変哲もないあまりにも普通すぎる鉄籠にネズミを入れて連れて行くのも可愛いと思った。
何せ実際に人が月に到達するのはこの映画ができてから40年後な訳で、今から40年前の人間にインターネットの到来を予期できたかと言われれば不可能な話だと納得できるように、これもまたその次元の話なんだと納得できる。

後半のプロットほぼ『オデッセイ』だった。

前半さえもっと短ければ大傑作だったな。惜しい。後半はまあまあ良かった。
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