似太郎

不死鳥の似太郎のレビュー・感想・評価

不死鳥(1947年製作の映画)
4.0
佐田啓二のデビュー作。リッチな戦争未亡人(田中絹代)の回想形式で語られる「人を想う心」を描いた木下恵介らしいヒューマンな味わいの深い逸品と言える。

時代が変わっても愛する人への痛烈な思いが胸を打つ木下のおセンチな雰囲気がすでにこの頃から確立されている。まだ戦前の雰囲気を引きずっている感じがあり、演出がやや古めかしい。

過酷な状況下で繰り返される愛情流転は、この頃の邦画の特色とも言えるかも知れない。今井正、成瀬巳喜男なんかも同様に。

60年代辺りから大島渚、増村保造ら新左翼の映画作家がこれらの古めかしい邦画の伝統を否定し綺麗事を一切排除していく方向に向かっていく。別に「綺麗事」でもいいじゃないかと自分は時たま思うんだけどね。
似太郎

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