Jimmy

流転の王妃のJimmyのレビュー・感想・評価

流転の王妃(1960年製作の映画)
3.0
ラピュタ阿佐ヶ谷で鑑賞。

京マチ子が、結婚前の女性から、満州国皇帝の「弟」に嫁ぎ、母となり、敗戦を迎えて、日本に戻るまでの波乱万丈の人生を演じた。
田中絹代監督の大映カラー作品。

田中絹代監督は、軍人の足元だけを映したり、目がチカチカするほどの格子状の窓を背景にした人物描写など、「風景の切り取り方」に工夫が見られる。
また、随所に「花」を配置する構図など、女性監督らしさも感じられた。

京マチ子も、それに応えて熱演。
満州国で敗戦を迎えた日本人妻の立場を描いた作品は初めて見たが、彼女たちの「立ち位置」がどういうものだったのか、については映画から分からなかった。何故、敗戦を迎えて、満州国にいた王妃(これは中国人)やその義理の妹にあたる京マチ子(こちらは日本人)が、まとめて迫害されたり投獄されたりするのか、さっぱりとその理由が分からなかった。映画の中で、少しでも説明してほしかった。
もしかしたら、当時の人間にとっては「知っていて当然」の事実であったが故に、田中絹代監督が、そうした当時の常識的描写を省いたのかもしれない。真実は不明。

また、フィルム提供会社の問題であるが、日本語会話と中国語会話が混ざる本作のような映画の場合、会話の半分近くを占める中国語どうしの会話場面には「字幕スーパー」をつけていただきたかった。
満州国皇帝などは中国人のため中国語しか話さないので、「この場面、重要な局面なんだろうな」と思っても、中国語なので、何を会話しているのか、ノースーパーでは判らない。

中国という設定の風景を、田中絹代監督がどこでロケしたのかは知らないが、広大な雰囲気は良く出ていたと思う。

力作ではあるが、中国語会話の字幕なしがマイナスであった。
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