TAK44マグナム

ザ・カンニング [IQ=0]のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ザ・カンニング [IQ=0](1980年製作の映画)
3.8
これぞボンクラの鑑!


エマニュエル・べアールの元旦那さんであるダニエル・オートゥイユ主演。
バカロレア(フランスの教育制度で合格=大学入学が可能になる)に受かるために万年予備校生の連中が本気になってカンニングに勤しむというお話。
何となく、少しだけ世相を反映させているような気もする作品ですが、ユルユルでお気楽な、典型的なフランス産コメディです。

約40年前と古い映画ですけれど、今観てもじゅうぶん笑えます。
モラルを無視したくだらないコントが気の抜けた音楽と共にダラダラと流れますが、これがバカバカしくて面白い。
別に核となるストーリーなんて無いです。
ボンクラ学生たちがひたすらイタズラに邁進するだけ。
イタズラをする悪知恵があるなら、それを勉学の方に使えば良いなんて意見は野暮ってもの。
出てくる学生は全員もれなくボンクラの集まりで、働きもせずに何年も予備校に親の金で通い、テキトーにぶらぶらして人生を消費しています。
真面目な人からすると「なんだこの怪しからん奴らは!ちゃんと勉強するか、働け!」と怒鳴りたくなるでしょうが、彼らは彼らなりに大人になる一歩手前の青春時代を謳歌しているのです。
まぁ、(特にセックスについて)無責任なのは否定できませんけれど。


舞台となるのはバカロレア合格率ゼロ%を誇る予備校。
そもそもIQにゼロって数字がありえるのか分からないのですが、合格率ゼロ%の学校に高い授業料払って子供をいれる親ってのもどうなの?
毎年、お金をドブに捨てているようなものだと思うのですが(汗)
ともかく、何とかして生徒たちを合格させたい校長はそれまでの放任主義を捨て、厳しく指導してゆくことを決めます。
そこでスパルタ教育要員として体育指導のゴツい先生が投入されるのですが、リメイクするなら是非、ジェイソン・モモアに演じて貰いたい!
何故なら、何となく雰囲気が似ていたから(苦笑)
ちなみにセリフはありません。
反対に、饒舌な「先生」が後半、秘密兵器として投入されます。
それがアメリカ製の最新式コンピューター学習マシーン!
でっかい黒い箱みたいなのに入ると椅子やモニターがあり、座るとベルトで固定され、モニターに問題が映ります。
しかもコンピューターが問題をまくしたて、早く答えろと要求、間違えようものなら頭や顔を棒やらハタキで何度も叩かれまくるのです!
正解するとご褒美としてペロペロキャンディが口元に伸びてきます!
なんだこれは!(笑)
この映画、後述するカンニングでも妙に機械に頼るし、人間が骨になったり、ヴィトン犬(身体中にルイ・ヴィトンのマークがある、お金持ちらしいお嬢さんの飼い犬)がドーベルマンに食べられたりと唐突に残酷だったり、何だか分かりませんが変なノリがあるんですよね。
笑えるなら何でもOKな精神なのでしょうか。


見せ場となる多彩なカンニングテクニックは終盤しか披露されません。
バカロレアに合格しないと刑務所行きになってしまうため、仕方なく勉強ではなくカンニングに励むのです(苦笑)
試験中に赤ちゃんが産まれるのも凄いですが、それを利用して医者までもがカンニングに加担したり、赤ちゃんのお尻をカンニングペーパー代わりにしたりと、あり得ないほどバカで非常によろしい。
バンダナの裏に答えを書いて、それをいちいちバチンバチンさせて盗み見るアナログなテクニックから、プロジェクターや遠隔連動装置(?)などハイテク機器まで総動員するカンニングシーンが最高にアホ!
なんであれでバレないのか?
答えは一つ、コメディだから!
親が率先して協力しているのも、麗しい親子愛じゃないですか。
親子揃って、どいつもこいつもボンクラばかりだよ!(苦笑)
もう時効でしょうから書いちゃいますけれど、本作をテレビで観て感化された筆者も消しゴムをくりぬいてカンニングペーパーを忍ばせたことがあります(汗)
効果的だったかどうかはご想像にお任せ致しますが・・・

少し残念なのは、生徒たちと対立していたのが予備校の校長だった筈が、クライマックスのバカロレア試験になると警察署長に取って代わってしまうところ。
すぐキレるバカ署長のキャラも良いのですが、校長たちが結局どうなってしまったのかが語られないのが物足りませんでした。
そうとう生徒たちを恨んでも仕方ない仕打ちを受けていたのに(汗)
可哀想に住む家も何もかも失い、あまりのショックに寝込んでしまったのかもしれませんね。

そんなわけで、あれもこれも全てがテキトーでいい加減な作品。
コントを繋いで一本の映画にでっち上げたようなモノですから仕方ない。
深く考えず、気軽にゲラゲラ笑いながらカウチポテトするのに最適かと思います。

ちなみに、ヒットしたのか続編が製作され日本でも「ザ・カンニング/アルバイト情報」というタイトルで公開されました。
観に行ったらカンニング要素は微塵もなく、タイトル詐欺にあいましたよ(汗)
そんな青春の淡い思い出。


テレビ放送、ゲオ宅配レンタルにて