"2046"、そこでは全てが変わらずに在り続ける。多くがそこに行ったが、帰ってきた者は1人もいない。
過去の恋を引きずるチャウ(トニーレオン)が、2046という小説を書き始め、その主人公に自らを投影していくというストーリー。
俳優や音楽、ストーリーや構図にも、随所にそれまでの王家衛作品の断片が散りばめられている。
本作「2046」は、王家衛が作り出した世界が散らばっている多元宇宙の中で、一点で収束して中継点となっているような作品であり、まさにそれが2046という場所なのかも。王家衛作品で描かれる輝かしく退廃的な刹那は、思い出や映画の中では"全てが変わらずに在り続ける"。そこには戻れないし、戻ったらもうそれっきり。でもそれを胸に抱えながら、たまに思い出して感傷に浸ることさえできれば、僕たちはまだ現実の中で生きていけるのだと思う。